ナステントは効果ある?鼻に入れるいびきデバイスの評価と限界

鼻から細い管を差し込んで気道を確保する、という発想のデバイスがあります。名前を知って、そこまでするのかと私も一度ひるみました。
先に結論を書きます。これは短い鼻グッズより奥へ届く一方で、気軽に買って今夜から始める道具ではありません。使ってよいかは、医療者に委ねる領域です。
この記事の目次
鼻から挿入するデバイスとは、何をする道具か
まず、言葉の整理からです。鼻から挿入するデバイスというのは、ナステントに代表される、鼻の穴から細くやわらかい管を差し込み、鼻の奥からのどの手前までの通り道に沿わせて、眠っているあいだ気道が塞がらないように内側から支える、という発想の道具です。空気の通り道そのものに、細い骨組みを一本通しておく、と考えると分かりやすいと思います。

ここで先に、この一群の性格を二つ押さえておきます。ひとつ、これは電池も薬も使わない、受動的な道具だということ。自分で空気を送り込むわけでも、のどを動かすわけでもなく、ただ管が通り道の形を保っているだけです。ふたつ、鼻に着ける市販のグッズとは届く深さが違うということ。ここが、この記事でいちばん伝えたい線引きになります。
鼻に着ける市販グッズとは、届く深さが違う
鼻の外に貼るテープ、入口を挟むクリップ、鼻の穴に差し込む短い筒。ドラッグストアで手に入るこの一群は、触れているのがどれも鼻の前のほうだけです。この短い鼻グッズの評価は鼻に着けるいびきグッズの記事にまとめたので、ここでは繰り返しません。対して、いま話しているデバイスは、その先の鼻の奥からのどの手前までを一本の管で沿わせる、という点で狙う場所が奥にあります。短い鼻グッズが届かなかった奥に手を伸ばそうとしているのが、この一群の立ち位置です。
空気を送るCPAPとも、別の道具
もう一つ紛らわしいのが、鼻から気道を扱うという一点で似て見えるCPAPです。ただしCPAPは空気の圧で気道を押し開ける機器で、こちらは空気を送りません。管が物理的に道を保つだけの、力のかかり方がまったく別の道具です。CPAPの中身はその記事に譲ります。ここでは、送る機械ではなく、通す管、とだけ区別しておいてください。
どこに届いて、誰に空振りするのか
では、この管はどこに届いて、誰に空振りするのか。カテゴリとしての評価を、ここで正面から書きます。

届く相手から。鼻の奥のあたりで通り道が細くなっていて、そこが眠っているあいだにさらに閉じてしまうタイプなら、奥まで沿う管は理屈のうえで相性がよい側になります。短い鼻グッズが入口までしか届かず空振りしていた人が、その先を支える発想としてたどり着くのが、この一群です。
次に、空振りしやすい相手です。いびきの音そのものは、口の天井の奥で垂れているやわらかいひだ(軟口蓋)や、力が抜けて落ちてくる舌の付け根で鳴っていることが多いとされています。鳴っている中心がそこにある人の場合、鼻から管を通しても、音の発生源そのものには手が届ききらないことがあります。鼻の通りは楽になったのに音が残る、という取り違えは、短い鼻グッズと同じ構図でここでも起こりえます。奥まで届くという言葉に、鳴っている場所まで届くという意味が含まれているとは限りません。管が沿うのは通り道であって、震える組織そのものを押さえにいく道具ではない、という区別は持っておいたほうがよいと思います。
この一群に固有の、三つのひっかかり
効く効かない以前に、この管には市販グッズにない性格の壁があります。私がカテゴリとして評価するときに重く見ているのが、次の三つです。
- サイズと長さの適合が、自分では決めにくい/鼻からのどまでの長さは人によって違います。合わない長さでは、届かないか、逆に当たって強い違和感が出ます。ここは感覚で選べる部分ではありません
- 異物感とえずき/鼻からのどにかけて物が通っている感覚に慣れられるかどうかで、評価が大きく割れます。のどの奥に触れると、えずいてしまう人もいます
- 衛生と扱い/鼻からのどへ直接入れる以上、清潔に保つ前提の道具です。扱いを誤ったまま使い回すのは避けたい一群です
この三つが、短い鼻グッズの剥がれや肌荒れとは別の、この管に固有の続けにくさです。とくに一つ目のサイズの適合は、あとで書くとおり、自分だけで判断してよい範囲を越えていると私は考えています。
気軽に買って始める道具ではない(使用可否は医療者に)
ここが、この記事でいちばんはっきり書いておきたいところです。鼻から挿入するデバイスは、いびきグッズのように気軽に買ってきて今夜から始める、という種類の道具ではありません。
通販などで手に入る形のものもあります。ですが、鼻からのどにかけて異物を通す以上、自分に合う長さやサイズの見きわめ、入れ方、そもそも入れてよい状態なのかどうかは、感覚で決めてよい範囲を越えています。鼻の中の構造は人によって違い、詰まりの原因が構造の側にある人もいます。そこに管を通してよいのかは、内側を見られる人にしか分かりません。私は医者ではありません。四十五歳の、いびきの当事者です。だからこの記事で書けるのは、あくまでカテゴリの見立てまでで、あなたが使ってよいかどうかは、私ではなく医療者に委ねる領域です。この一線だけは、はっきりさせておきたいと思います。
検討する前に、紙とペンでやる3ステップ(このデバイス用)
とはいえ、気になった気持ちのまま何もしないのも落ち着きません。そこで、このデバイスが気になったときに、医療者へ相談を持っていく前の整理として、私が自分で回している手順を置いておきます。道具もお金も要りません。判定をするための手順ではなく、判定を渡すまでの間、自分の状況を言葉にしておくためのものです。
- いま狙いたい場所を、一つ書く。紙に「鼻の奥が詰まる感じがある」「口が開いてしまう」など、自分が困っている場所を一行で書きます。ここが鼻の奥寄りなのか、のどや舌の付け根寄りなのかで、この管が届く相手かどうかの見当が変わります。
- 市販の鼻グッズを試した結果を、その下に書く。短い鼻グッズを着けた夜と着けない夜で音が動いたか、覚えている範囲で書きます。入口の道具で少しでも動いたなら、奥まで届く管が候補に入る材料になります。まったく動かなかったなら、鳴っている場所が鼻ではない可能性のほうを先に疑います。
- いちばん上に、確かめる相手を一つ書く。この管を自分で買うか、ではなく、まず耳鼻咽喉科などで鼻の奥の状態を見てもらう、と書きます。サイズや使用の可否は、そこで相談する事柄です。
回数の目安:気になったときに一回。一回で紙一枚、3行まで。注意が一つあります。この3行は、自分でこのデバイスの要不要を決めるためのものではありません。それは診てもらったうえで決める事柄です。ここでやっているのは、相談する前に、自分の状況を短い言葉にしておく整理だけです。手ぶらで迷い続けるより、この3行を持って相談したほうが、話が早く進みます。
\ 買う前に、まず狙う場所を決める /
奥まで届く管を検討する前に、自分のいびきがどこで鳴っているのかを整理しておくと、相談が早く進みます。原因のタイプ別の組み立て方は気道力メソッドにまとめてあります。今日はまず、狙う場所を紙に一行書くところからで十分です。
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私が、鼻に入れる管の存在にひるんだ話
私のケース:鼻から入れる細い管の存在を知って、そこまでするのかと一度ひるんだ
順番から書きます。私はいびきを軽くしようと、二〜三年ほどグッズを買い続けました。鼻に貼る拡張テープ、口をとめるテープ、型取り式のマウスピース、対策をうたう枕。妻は自分用の耳栓を買っていました。どれも数晩で引き出しに戻りました。
その買い足しが止まったのは、妻から「今日は下で寝るね」と言われた夜でした。その翌夜、初めて計測アプリを枕元に置いて、朝に出たのが142点です。残っていた録音を再生したら、低く長く引きずる音が延々と鳴っていました。
そのあと、対策を検索しているうちに、鼻から細い管を差し込んで気道を確保する、というデバイスの存在を知りました。正直、最初に浮かんだのは、そこまでするのか、という後ずさりでした。鼻からのどの手前まで管を通して眠る絵が、当時の私にはずいぶん重く見えたのです。
ただ、あとから自分の後ずさりを分けてみると、二つが混ざっていました。ひとつは見た目の重さ。もうひとつは、そもそも自分がその管を要る状態なのかを確かめないまま、いちばん大がかりな絵だけを先に思い描いていたことです。私の録音には、音が途切れて無音になり大きく吸い直す部分は入っていませんでした。無呼吸を疑う材料が手元にないのに、勝手に管を通した自分を想像して、ひるんでいたわけです。
だから私は、この管を買っていません。鼻の奥が詰まっている自覚もそれほど強くない。いまは自宅でできる範囲から始める、と決めました。私は医者ではないので、書けるのはそこまでです。
ここで、後ずさりとは切り離して、はっきり書いておきたいことがあります。次のようなサインがある場合は、鼻の管を調べるより先に、医療機関で相談してほしい段です。

- 眠っているあいだに呼吸が止まっていた、と家族から指摘されたことがある
- 録音に、音が途切れて無音になり、そのあと大きく吸い直す音が入っている
- 寝た時間は足りているのに、昼の眠気が強い(会議中や運転中に落ちそうになる)
このうち呼吸停止の指摘と日中の強い眠気は、自宅で道具を試す前に受診、という扱いになっている項目です。眠気が運転や仕事に出ているなら、管の良し悪しを調べている場合ではありません。どこへ行けばよいかはいびきは何科かの記事にまとめました。受診を先にしてください。
この管を検討する前に、確かめておくこと
最後に、このデバイスが気になった人が、その前に確かめておくとよいことを並べます。受診がまだで、いま挙げたサインに当てはまる方は、この節より医師の指示が先です。
まず、奥まで届く管に手を伸ばしたくなるのは、たいてい手前の手を尽くしても音が残ったときです。そこで一度立ち止まってほしいのは、手前の手を、順番どおりに試したかという点です。鼻の入口の道具、寝る姿勢、のどや舌の力。この順番を飛ばして、いきなりいちばん奥の管に向かうと、本当は手前で足りたかもしれない場所を確かめないまま、大がかりな側から入ることになります。
そしてもう一度書きます。私は医者ではありません。鼻からのどへ管を通してよいかどうかは、鼻の奥を見られる人が決めることで、記事や写真で決めるものではありません。この記事で書けたのは、この一群が何をしようとしている道具なのか、どこに届いてどこに空振りするのか、というカテゴリの見立てまでです。
この管より先に、自宅で手が届くところ
受診して様子見でよいと言われた人、いまの私のようにサインに当てはまらない人には、自宅で手を入れられる場所がまだ残っています。手を入れられるのは大きく分けて、寝る姿勢、鼻の通り、のどと舌の力の三つです。どれが効くかは原因のタイプで変わるので、いちばん奥の管を検討するのは、この手前の三つを順番に試したあとでも遅くありません。

順番だけ、もう一度確認しておきます。呼吸停止の指摘か強い眠気があるなら受診が先。そうでないなら、手前の三つを試して、それでも残るなら、鼻の奥まで届く管は医療者に相談して決める。この段取りが、いちばん遠回りしない道だと思っています。
