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入院の大部屋でいびきが不安な人へ|事前の準備と、部屋での作法

入院の大部屋でいびきが不安な人へ|事前の準備と、部屋での作法

入院が決まって、大部屋と聞いた瞬間に、自分のいびきのことが頭をよぎる。逆に、隣のベッドの音で眠れないまま朝を迎えることもあります。

ここでは、逃げ場のない大部屋という場面にしぼって、入院前の準備と、部屋に入ってからの作法を並べます。かく側と、聞かされる側の両方の立場から書きます。

この記事の目次
  1. 大部屋は、家でもホテルでもない
  2. 私は、親の付き添いで大部屋に泊まった夜がありました
  3. 入院が決まった週にやる、かく側の準備
  4. 大部屋に入ってからの作法
  5. 隣のベッドの音で眠れないときと、見逃してはいけないサイン
  6. 数日間を、勝ち負けではなく消耗の少なさで乗り切る

大部屋は、家でもホテルでもない

いびきの悩みは、場所によって難しさの種類が変わります。家なら、限界の夜に別の部屋へ移れます。ホテルの相部屋なら、事前に部屋を分ける相談もできます。ところが入院の大部屋は、そのどちらの逃げ道も細くなる場所です。ベッドは割り当てられていて、勝手には動かせません。消灯と起床の時刻は決まっています。仕切りはカーテン一枚で、音も気配もそのまま通ります。

夜ベッドで眠れない日本人
逃げ場がないという条件が、同じ音量を何倍にも重くします。

難しさをもう一段深くしているのが、そこにいる全員が体調を崩している、という前提です。手術のあと、検査の合間、治療の途中。だれもが眠りを必要としていて、だれもが本調子ではありません。うるさい、の一言が出しにくいのは、旅行の相部屋と同じですが、大部屋ではそこに、相手も病人だという遠慮が重なります。かく側にとっても、周りに迷惑をかけているという負い目が、体調の不安の上に乗ってきます。

大部屋には、二つの立場が同居している

この記事で扱うのは、その二つの立場の両方です。一つは、自分がいびきをかく側で、同室の人を起こさないかと気に病む立場。もう一つは、隣のベッドの音で眠れず、しかも相手にも管理側にも言い出しにくい立場。大部屋では、この二つが同じ部屋の中に、しかも同じ一人の中に同居することさえあります。

先に一つだけ、線を引いておきます。家族以外の相手のいびきに当たったときの、部屋割りの相談の仕方や、また会う相手への伝え方といった一般的な立ち回りは、社員旅行や寮を前提にしたいびきがうるさい人にどうするかにまとめてあります。この記事はそれを繰り返さず、入院という場面に固有のところだけを書きます。病棟は幹事や総務とは別の相手ですし、動かせる範囲も違うからです。

立場も書いておきます。私は四十五歳、いびきをかく側の当事者です。計測アプリの初回スコアは142点でした。私は医者ではありませんし、医療者でもありません。だから診断や治療の中身には立ち入りません。ここに書けるのは、逃げ場のない部屋で自分がどう立ち回ったか、そして何を準備しておけばよかったかだけです。

妻妻
大部屋のいびきなんて、我慢するしかないんじゃないですか
静山静山
その夜だけを取り出すと、たしかに我慢が中心になります。ただ入院は、決まってから当日までに数日から数週間あります。私が言いたいのは、我慢の量を減らす手が、その準備期間のほうに残っているということです。

私は、親の付き添いで大部屋に泊まった夜がありました

自分の側の話から書きます。この記事を書いている人間が、大部屋で一睡もできなかった夜の記録です。

静山 静山の実体験

私のケース:親の付き添いで大部屋に泊まった夜、自分の音を気にして一睡もできなかった

親の入院に付き添って、大部屋の簡易ベッドで一晩を過ごしたことがあります。カーテンで仕切られた向こう側にも、こちら側にも、眠っている他の患者さんがいました。付き添い用の折りたたみのベッドに横になって、消灯の放送を聞いたところまでは覚えています。

そこから眠れませんでした。理由は、隣の音ではありません。自分が鳴らしてしまうことのほうが怖かったのです。私は自分のいびきが142点だと知っていました。あの録音の、低く長く引きずる音を、この静かな部屋で自分が出したら。そう考えたとたんに、眠るという行為そのものが、加害のように感じられました。仰向けになりかけては、はっとして体を起こす。それを何度も繰り返して、結局、朝まで浅く座ったような姿勢のまま起きていました。

皮肉なのは、その夜だけは、私は一度も鳴らさなかったはずだということです。眠っていないのだから当然です。守れたのは音ではなく、眠れない一晩と引き換えにした沈黙でした。親の付き添いという、本来は相手のための夜を、私は自分の音の心配で塗りつぶしてしまいました。

この夜のあとで思ったのは、怖かったのは音そのものではなく、準備を何もしていなかったことだ、ということでした。もし個室の付き添いだったら。もし横になる向きを先に決めていたら。もし、いびきをかくかもしれないと先に一言伝えていたら。あの座ったままの一晩は、いくらか違っていたはずです。

この経験から持ち帰ったことが二つあります。一つは、入院の場面での不安は、当日に湧いてくるように見えて、実は準備の不足から来ているということ。もう一つは、かく側の心配と、聞かされる側のつらさは、同じ部屋の中で背中合わせになっているということです。次の章から、準備と作法を、その二つの立場に沿って並べていきます。

入院が決まった週にやる、かく側の準備

ここが、この記事のいちばん書きたいところです。大部屋のいびきは、当日その場でどうにかする問題ではありません。入院が決まってから当日までの数日を、どう使うかの問題です。私があの夜に足りなかったのも、まさにここでした。

仰向けで口を開けて眠る日本人男性
眠れば鳴るかもしれない。その不安は、当日ではなく前もって減らせます。

入院が決まった週にやる、3つの準備

  1. 病棟に一度だけ、いびきのことを伝えておく。入院前の説明や問診の場で、自分はいびきをかくこと、大部屋で周りに響かないかが気になっていることを、こちらから言います。そのうえで、個室に空きがあるか、差額の負担はどのくらいか、大部屋なら入口寄りなど配慮できる位置があるか、この三つを聞いておきます。答えを全部もらえなくても、聞いたという事実だけで当日の不安がかなり減ります。注意/これは入院日より前に言うことです。当日の消灯後に言っても、配置はもう決まっていて、病棟も動きにくくなっています。
  2. 自分だけで完結できる手を、荷物に一つだけ入れる。耳栓のように、相手の気道に触れず自分の側で閉じられる道具です。ただし種類の選び方や環境音の使い方は入院に固有の話ではないので、相部屋での立ち回りの記事のほうに譲ります。注意/新品を当日はじめておろさないこと。合わない耳栓を消灯後に初めて試すと、それだけで眠れない夜になります。家で一度使ってから持っていってください。
  3. 入棟した日の消灯前に、担当の看護師さんに一言だけ伝えておく。いびきをかくかもしれないこと、もし響いていたら遠慮なく声をかけてほしいこと。これだけで、翌朝に自分から気に病む量が変わります。看護師さんは大部屋の夜を毎日見ている相手なので、こちらが思うより淡々と受け止めてくれます。

回数の目安:病棟への相談は入院前に1回、看護師さんへの申告は入棟した日に1回。同じことを何度も重ねて言う必要はありません。伝えた事実が一つ残っていれば、それで足ります。

手術を受ける入院で、麻酔や鎮静が絡む場合は、この準備にもう一項目が加わります。眠らされている間のいびきや呼吸のことを、麻酔の前の問診でどう伝えるかという話は、場面が変わるので静脈麻酔の前に伝えておきたいことにまとめました。大部屋の夜の準備とは別の段取りとして、必要な方はそちらを見てください。

妻妻
いびきをかくと自分から言うのは、正直はずかしいです
静山静山
私も同じでした。ただ、黙って当日を迎えて座ったまま朝を迎えるより、事前に一言伝えておくほうが、結果としてずっと楽でした。恥ずかしさは前もって一度だけ。黙る代償は、入院している何日間ぶんも続きます。

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入院の数日をしのぐ準備とは別に、いびきそのものを長い目で軽くしていく組み立ては気道力メソッドにまとめてあります。原因タイプ別の自宅トレと30日の記録シートを、道具なしの買い切りで一冊にしています。退院してから、落ち着いて始められます。

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大部屋に入ってからの作法

準備をして入棟したあとは、部屋の中での振る舞いだけが残ります。ここも、かく側と聞かされる側の両方に共通する作法があります。特別なことではなく、カーテン一枚の空間を、みんなが少しずつ過ごしやすくするための決めごとです。

ナイトテーブルの水と時計
大部屋で自分の側にあるのは、この枕元の半径だけです。

消灯前に、カーテン越しでも一度あいさつをしておく

入院した初日、同室の人と一度も言葉を交わさないまま消灯を迎えると、そのあとの物音がすべて緊張を帯びます。カーテン越しでも、失礼しますとか、お世話になりますとか、一言だけ交わしておくと、夜中に自分が音を出しても、翌朝の空気がまったく違います。相手の音に対しても、同じことが起きます。顔の見えない相手の音は、素性の分かる相手の音より、なぜか長く感じられるものです。

音を止めようとして、無理な姿勢で固まらない

かく側になると、鳴らさないために体を固定したくなります。ただ、入院中は体調そのものが本調子ではありません。無理な姿勢で一晩こわばると、回復に向けるはずの体力をそこで削ります。それに、いびきを今この瞬間にスイッチのように止める手は、私の知る範囲では見つかっていません。今夜の音を軽くするために動かせるのは、姿勢や鼻の通りといった条件のほうで、その具体的な話は入院に限らないのでいびきを止める方法の記事に譲ります。この記事で言いたいのは一点だけです。大部屋では、音を止めることより、体を休ませることを優先してください。

ナースコールと、翌朝の身の処し方

聞かされる側になったとき、真夜中に自分で相手を起こしに行くのは、大部屋では避けたほうがいい行動です。相手も病人で、起こされた側の体調がそのぶん削られますし、当人同士の角も立ちます。どうしても限界なら、まず看護師さんに声をかける。ナースコールは、そのためにも使える窓口です。判断を医療者に一度預けるという形にすると、相手との関係に直接の傷が残りにくくなります。

翌朝の身の処し方も、決めておくと楽です。よく眠れましたか、と聞かれたときに、かいてしまったかもしれない側は、うるさかったですよね、と自分から重く切り出さない。眠れなかった側も、相手を責める言い方をしない。おはようございます、の一言で流すのが、同じ部屋で数日過ごす相手には、いちばん角が立たない作法でした。長く話すほど、翌日以降に気まずさが残ります。

妻妻
看護師さんに言うのは、大げさに思われませんか
静山静山
大部屋の眠りは治療の一部でもあります。眠れないことを伝えるのは、わがままではなく、体調の相談です。私は付き添いのときに遠慮して黙りましたが、あれは黙るべきではなかったと今は思っています。

隣のベッドの音で眠れないときと、見逃してはいけないサイン

ここからは、聞かされる側に回ったときの話を、もう少し具体的にします。大部屋がやっかいなのは、旅行の相部屋と違って、部屋割りを自分で動かす交渉がほとんどできないことです。ベッドは治療の都合で決まっていて、こちらの好みで替えてもらえるものではありません。だから、できることは自分の側の半径に限られます。

その自分の側の手、たとえば耳栓のように聞かされる側だけで完結する道具の使い方は、入院に固有の話ではないので相部屋での立ち回りの記事にまとめてあります。ここでは繰り返しません。入院の場面で加えておきたいのは、我慢を続ける前に、看護師さんに一度相談してよい、という一点です。夜眠れないことは、日中の回復に関わります。それは体調の話なので、遠慮の対象ではありません。

日中の眠気で目をこする男性
眠れない夜が続くと、昼のあなたの回復のほうが削られていきます。

ここだけは、気まずさより先に伝えてほしい

大部屋で同室になったからこそ気づけることが、一つあります。それは、隣の人の呼吸が止まっているかどうかです。いびきの音が一定に鳴り続けているのではなく、ふっと無音になって、しばらくしてから大きく吸い直す。この形が混ざっている場合、睡眠時無呼吸症候群のサインとされているものです。本人は眠っているので気づけませんし、家族は慣れてしまって聞き流します。気づけるのは、その夜たまたま隣にいた人だけ、ということが起こります。

あわせて、あなた自身のことも確かめておいてください。寝ているあいだに呼吸が止まっていると指摘されたことがある、あるいは、しっかり寝たはずなのに日中の眠気が強くて、会議中や運転中にうとうとしてしまう。このどちらかに心当たりがあるなら、大部屋の作法でしのぐ話ではありません。退院してからでよいので、医療機関で相談してください。窓口の分け方はいびきは何科かにまとめてあります。

もう一度書いておきます。私は医者ではありません。ここに書けるのは、聞こえた音の種類と、それをどこへ渡すかという話までで、その先の判断は医療者の領分です。ただ、無音と吸い直しの音は、部屋割りや耳栓で処理する話ではない、ということだけは、はっきり分けておきたいと思いました。

妻妻
入院中の父のいびき、前より音が変な気がして
静山静山
音が途切れて、そのあと大きく吸い直す間があるかどうかだけ、気にして聞いてみてください。もしあれば、看護師さんに一言伝えておくといいと思います。あとの判断はお医者さんの側です。

数日間を、勝ち負けではなく消耗の少なさで乗り切る

最後に、この記事で並べたことを、入院という時間軸の上に置き直します。

入院は、多くの場合、期間の決まった滞在です。だからいびきの問題も、根本を今この数日で解決しようとしなくて構いません。狙うのは、その数日を、自分も同室の人も、できるだけ削られずに通り抜けることです。勝ち負けではなく、消耗の少ないほうを選ぶ。私が付き添いの夜に見失っていたのは、この視点でした。音を出さないことに全部を賭けて、眠りも体力も差し出してしまったからです。

やることを、順番に一度だけ並べておきます。入院が決まったら、病棟にいびきのことを伝えて、個室や配置を確かめる。自分の側で完結する道具を一つだけ、家で試してから持っていく。入棟した日に、看護師さんへ一言だけ申告する。部屋では、消灯前のあいさつと、無理をしない姿勢と、ナースコールという逃げ道。聞かされる側に回ったら、我慢を続ける前に相談する。そして、無音と吸い直しの音にだけは気を配る。ここまでが、この記事の範囲です。

入院そのものは、いびきのための時間ではありません。だからこそ、いびきに気を取られて本来の療養や付き添いがおろそかになるのは、いちばん避けたいところです。準備を前もって済ませておくのは、当日の自分を、音の心配から解放して、本来やるべきことに戻すためだと考えています。

妻妻
退院したあとは、どうすればいいですか
静山静山
落ち着いてから、自分のいびきがどこで鳴っているのかを見ていくのがいいと思います。入院は非常時なので、根の話はそのあとで十分です。私自身、まずは測るところからやり直しました。

あの座ったままの一晩から、私が学んだことは単純です。逃げ場のない部屋で怖いのは、いびきそのものではなく、何も決めていない状態でその夜を迎えることでした。決めごとが一つでもあれば、同じ音でも、同じ部屋でも、過ごし方が変わります。

\ 非常時を越えたら、根の側へ /

大部屋の数日をしのいだあと、いびきそのものを長い目で軽くしていく組み立ては気道力メソッドにまとめました。原因タイプ別の自宅トレと30日の記録を、1日3分から、道具なしで始められます。退院して日常が戻ってからで、間に合います。

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この記事を書いた人

静山

静山 |いびきスコア142点からの30日再現実験・進行中

静山(しずやま)/40代。長年の爆音いびきで家族に別室を言い渡されかけた当事者。いびきラボのスコア(開始時142点)を毎晩記録し、舌・喉・顎・呼吸の自宅トレ『気道力メソッド』で下げていく過程をすべて公開している。医者ではないので治療の話はしない。自宅でできることだけを、実測の記録つきで書く。

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