ホーム気道力トレカプセルホテル・夜行バス・ネカフェでいびきが不安な人へ|かく側の備え

カプセルホテル・夜行バス・ネカフェでいびきが不安な人へ|かく側の備え

カプセルホテル・夜行バス・ネカフェでいびきが不安な人へ|かく側の備え

カプセルホテル、夜行バス、ネットカフェ。壁がカーテン一枚で、逃げ場のない公共の空間で眠るとき、自分のいびきが見知らぬ人に届くのが怖くなる。私もその夜を知っています。

ここでは、その三つの空間にしぼって、自分がかく側の備えだけを並べます。隣の音で眠れない側の立ち回りや今夜その場の手は、別の記事に譲ります。

この記事の目次
  1. 逃げ場のない公共空間で「自分がかく側」になるという怖さ
  2. 私は、出張のカプセルホテルで眠れなかった夜があります
  3. カプセル・夜行バス・ネカフェ、逃げ場のなさは同じではない
  4. 怖さは当日ではなく、予約と前夜に減らせる
  5. 当日その場でできることの限界と、見逃せないサイン
  6. かく側の備えは、根性ではなく段取りに宿る

逃げ場のない公共空間で「自分がかく側」になるという怖さ

つまり、重いのは音の大きさそのものではなく、その音を置く場所のほうです。この三つの空間には、同じ条件が重なっています。仕切りが布か浅い板しかないこと、眠る時刻も起きる時刻も自分の裁量では決まらないこと、そして隣で寝ているのが家族ではないこと。家のように別の部屋へ移ることもできず、ホテルの個室のように扉で音を閉じることもできません。静かにしていようと決めたところで、眠ってしまえば自分の体は自分で操れない。逃げ場がない、というその一点だけで、家なら気にも留めない程度の音が、何倍にも重くなります。

カプセルホテルの通路と、両側にカーテンで仕切られた寝台
壁ではなく布一枚で仕切られた並びでは、音も気配もそのまま隣へ届きます。

いびきの悩みは、たいてい家族との話です。ところがこの三つの空間では、相手が見知らぬ他人に変わります。二度と会わない人かもしれない。それでも、いま壁一枚の向こうで眠ろうとしている。その人に自分の音が届くかもしれないという負い目は、家で妻に申し訳なく思うのとは、少し種類の違う重さがありました。謝ることもできず、事情を説明することもできず、ただ音だけが先に届いてしまう。それが、この場面の居心地の悪さの正体だと思います。

この記事が書くのは「かく側」の備えだけです

逃げ場のない空間の話には、二つの立場が同居しています。隣の音で眠れない側と、自分が音を出してしまう側です。この記事は後者、つまり自分がかく側の備えにしぼります。見知らぬ人のいびきで眠れない側の立ち回りは、社員旅行や寮を前提にしたいびきがうるさい人にどうするかにまとめてあるので、聞かされる側の方はそちらへどうぞ。ここでは繰り返しません。

先に立場を書いておきます。私は四十五歳、いびきをかく側の当事者です。計測アプリの初回スコアは142点でした。私は医者ではありませんし、医療者でもありません。だから診断や治療の中身には立ち入りません。ここに書けるのは、逃げ場のない公共の空間で自分がどう縮こまり、何を準備しておけばよかったかだけです。

妻
一晩のことなんだから、気にしすぎでは
静山静山
一度きりの夜なら、私もそう思います。ただ出張が続く人や、夜行バスをよく使う人にとっては、同じ夜が何度も来ます。何度も来る夜に「気にしすぎ」で蓋をすると、毎回同じ場所でつまずきます。私が分けているのは、そこです。

私は、出張のカプセルホテルで眠れなかった夜があります

この三つの空間の怖さを、私は身をもって知っています。自分の音を測るより前の、出張の夜の話です。

夜ベッドで眠れない日本人
眠れなかったのではなく、眠るのが怖かった。この二つは似ていて別のものです。
静山 静山の実体験

私のケース:出張のカプセルホテルで、隣の物音に自分の音が重なるのが怖くて眠れなかった

地方への出張で、駅前のカプセルホテルに泊まった夜でした。まだ自分のいびきを測る前で、鼻に貼るテープや口をとめるテープを試しては、数晩で引き出しにしまっていた頃です。チェックインして寝台にもぐり込み、カーテンを引いた瞬間に気づきました。ここは、音がまったく遮られない。両隣の寝台から、寝返りの衣ずれや、小さな咳が、すぐ耳元で聞こえます。ということは、自分のいびきも同じだけ筒抜けになるということです。

消灯後、隣の人が寝返りを打つ物音がするたびに、次は自分の番だという気がして怖くなりました。眠ってしまえば、あの低い音が、この静かな並びの寝台に響く。そう考えると、眠るという行為そのものが、周りへの迷惑の引き金のように感じられて、かえって目が冴えていきました。天井までの距離が近い箱の中で、私は仰向けになりかけては、はっと体を起こすことを、何度も繰り返していました。

結局その夜は、ほとんど眠れませんでした。皮肉なのは、眠らなかったおかげで、たぶん一度も鳴らさなかっただろうということです。守れたのは音ではなく、眠れない一晩と引き換えにした沈黙でした。翌日の商談は、頭に霧がかかったまま進みました。

あとから自分の音が142点だと知ったとき、真っ先に思い出したのが、このカプセルの夜でした。妻が家で聞いていた音を、あの並びの寝台で、見知らぬ人にも聞かせるところだった。怖かったのは音そのものではなく、その空間で何も準備していなかったことだと、今は思っています。

この夜から持ち帰ったことが二つあります。ひとつは、逃げ場のない空間での不安は、当日その場で湧いてくるように見えて、実は準備の不足から来ているということ。もうひとつは、その不安に効く手のほとんどが、部屋に入ってからではなく、予約と前夜のほうに残っているということでした。次の章から、まず三つの空間の性質を分けて、それから準備の手順を並べます。

カプセル・夜行バス・ネカフェ、逃げ場のなさは同じではない

ひとくちに逃げ場のない公共空間と言っても、三つはそれぞれ性質が違います。かく側にとって何が難しいのかは、空間ごとに変わります。順番に並べます。

カプセルホテル

横になって眠れるという点では、三つの中でいちばん家に近い空間です。ただし仕切りは布一枚で、寝台が長い通路の両側に並んでいます。この「並んでいる」というのが曲者で、音が反射して、どの寝台からの音なのかが分かりにくいまま、全体にこもります。寝返りが打てるので姿勢の自由はある一方、静けさが徹底されているぶん、自分の音の目立ち方も大きくなります。私がいちばん縮こまったのが、この形でした。

夜行バス

通勤電車で居眠り
乗り物の中で眠るときは、座ったまま顎が上を向きやすくなります。

夜行バスは、横になれないという条件が加わります。座ったまま、あるいは少し倒したリクライニングで眠るので、顎が上を向いて喉が詰まりやすい姿勢になりがちです。顎が天井を向くと鳴りやすいという話自体は家の夜と同じで、角度を整える具体的な手はいびきを止める方法に譲ります。ここで言いたいのは、夜行バスは「もともと鳴りやすい姿勢を、長時間、逃げ場なく続ける」空間だということです。エンジン音がある程度は音を紛らわせてくれますが、それに賭けるには時間が長すぎます。

ネットカフェ

ネットカフェは、席のタイプで難易度が大きく変わります。床に近い高さで横になれるフラット席と、座って倒すだけのリクライニング席では、取れる姿勢がまるで違います。個室風の仕切りがあっても、天井の側は開いていることが多く、音は上から回って隣へ抜けます。深夜でも人の出入りや物音が絶えないので、完全な静寂ではありません。そのぶんカプセルよりは音が紛れますが、仕切りの上が開いている以上、筒抜けであることに変わりはありません。

三つに共通しているのは、当日その場で音を消す手がほとんど無いことと、選べる余地が予約の段階に集中していることです。だから次の章では、部屋に入ってからではなく、予約と前夜にやることを並べます。なお、家族以外の相手と同じ部屋になる相部屋一般の立ち回りはいびきがうるさい人にどうするか、入院の大部屋という医療の場に固有の準備は入院の大部屋でいびきが不安な人へに、それぞれ分けてあります。この記事が扱うのは、自分で選んで泊まる商業の空間だけです。

妻
結局どれを選べばいいんですか
静山静山
かく側の負担でいえば、横になれて仕切りの深い順です。ただ、料金も時間帯も人それぞれなので、順位を丸暗記するより、次の選び分けの手順を一度やってみるほうが早いと思います。

怖さは当日ではなく、予約と前夜に減らせる

ここが、この記事のいちばん書きたいところです。逃げ場のない空間のいびきは、当日その場でどうにかする問題ではなく、予約と前夜という準備の時間に手を打つ問題でした。私があのカプセルの夜に足りなかったのも、まさにここです。

予約する前にやる、空間の選び分け(3分)

いちばん効くのは、当日ではなく予約の段階です。ここを逃すと、あとは全部しのぎになります。私が出張のたびにやっているのは、次の三手順です。

  1. 候補の空間を、仕切りの固さで三段階に分けます。扉のある完全個室/固い壁とカーテンの併用/カーテンだけ、または仕切りなし。上ほど、かく側の負担が軽くなります。
  2. 次に、取れる姿勢で三段階に分けます。横になって寝返りが打てる/横になれるが狭くて固定される/座ったままかリクライニングだけ。こちらも上ほど楽です。
  3. 予算の範囲で、仕切りと姿勢の両方ができるだけ上のものを選びます。同じくらいなら、姿勢より仕切りを優先します。音は、姿勢を整えても完全には消えないので、遮ってくれる壁のほうが効くからです。

回数の目安:予約のたびに一回、三分まで。

注意が二つあります。ひとつ、星の数やクチコミの点数で選ばないこと。あの評価は寝心地や清潔さの話で、あなたの音が隣に届くかどうかとは別の軸です。ふたつ、いちばん安い選択肢に反射で飛びつかないこと。ネットカフェのオープン席や夜行バスの最安の座席は、たいてい仕切りも姿勢も下の段にあります。差額は、翌日の自分の頭の働きで返ってくると考えると、選び方が変わります。

出発の前夜にやる、狭さの下見(5分)

もうひとつ、私が教材で姿勢の考え方を覚えてから、狭い空間に当てはめて使っているやり方があります。要点は、本番の窮屈さを、前の晩に家で一度だけ再現しておくことです。教材が教えてくれるのは体の動かし方ですが、それを「その空間で本当に取れるのか」を確かめる下見に、私は使い直しています。

  1. 泊まる空間で取れそうな姿勢を、家のベッドや布団で一度作ってみます。カプセルなら横になって片側を壁につけた形、夜行バスなら椅子を軽く倒した座位、ネットカフェのフラット席なら床に近い高さ、というふうに、本番の窮屈さをまねます。
  2. その形のまま二、三分じっとして、寝返りが打てるか、顎が天井を向いて固定されないかを確かめます。ここで分かるのは、その空間で自分が現実に取れる姿勢がどれか、という一点だけです。
  3. 顎が上を向いて固定されそうなら、支えになる巻き物(畳んだ上着やタオル)を一つだけ荷物に決めます。当日は、前夜に当たりをつけた位置に、それを差し込みます。

回数の目安:出発の前夜に一回だけ。持っていく支えは一つまで。

注意はひとつです。前夜に、本番用の新しい道具をいきなり試さないこと。合わない物を出先で初めて使うと、それだけで眠れない夜になります。家で一度なじませた物だけを持っていってください。なお、横向きや枕の角度そのものを整える手順は、家の夜と共通なのでいびきを止める方法に譲ります。この記事が足すのは、その手を狭い空間で実際に使えるかどうかを、前もって下見しておく一段だけです。

妻
前の晩にそこまでやるのは、大げさに感じます
静山静山
五分だけです。あのカプセルの夜、私が持っていなかったのは、テープでも枕でもなく、この五分の下見でした。当日にできることが少ないと分かっているからこそ、前夜に寄せています。

\ 空間の下見の、その先へ /

前夜の下見でしのげるのは、その夜の窮屈さまでです。いびきそのものを原因の側から軽くしていく組み立ては気道力メソッドにまとめてあります。原因タイプ別の自宅トレと三十日の記録を、道具なしの買い切りで一冊にしています。

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当日その場でできることの限界と、見逃せないサイン

ここまで準備の話を続けてきたのは、当日その場でできることが、思いのほか少ないからです。準備を勧める理由そのものが、当日の手の乏しさにあります。

眠ってしまえば、いびきをスイッチのように止める手は、私が調べた範囲にも、自分で試した範囲にもありませんでした。その場で動かせるのは、姿勢や鼻の通りといった条件のほうだけで、その具体的な手は家の夜と変わらないのでいびきを止める方法に譲ります。この記事では繰り返しません。予約と前夜で仕込んでおいた支えを、当日は思い出して当てるだけ、というくらいの心づもりがちょうどいいと思います。

耳栓のように、聞かされる側が自分だけで完結できる道具の話も、この記事の担当ではありません。逃げ場のない空間には、自分がかく側と、隣の音で眠れない側が同居します。後者の立ち回りはいびきがうるさい人にどうするかにまとめてあるので、その夜あなたが聞かされる側にも回っているなら、あわせて読んでおくと荷物が決まります。

日中の眠気で目をこする男性
出先で眠れない夜が続くと、削られるのは翌日のあなたの頭のほうです。

ここだけは、恥ずかしさより先に確かめてほしい

自分のいびきが、一定に鳴り続けるのではなく、ふっと無音になって、しばらくしてから大きく吸い直す。この形が混ざっているなら、睡眠時無呼吸症候群のサインとされているものです。これは、空間の選び方や前夜の下見でしのぐ話ではありません。寝ているあいだに呼吸が止まっていると指摘されたことがある、あるいは、しっかり寝たはずなのに日中の眠気が強くて、会議中や運転中にうとうとしてしまう。このどちらかに心当たりがあるなら、泊まる場所を工夫する前に、一度医療機関で相談してください。何科へ行くかはいびきは何科かにまとめてあります。私は医者ではないので、ここから先の判断は書けません。書けるのは、その音は自宅の工夫で様子を見る範囲とは別だ、という線引きまでです。

妻
出張のたびに眠れてなかったの、気づいてたよ
静山静山
言われて初めて、隠せていなかったんだと分かりました。かく側の心配は本人だけのものに見えて、実は近くの人にも伝わっています。だから一人で抱えずに、準備の段取りにしてしまうのがいいと思っています。

かく側の備えは、根性ではなく段取りに宿る

最後に、この記事で並べたことを、時間の順に置き直します。

逃げ場のない公共の空間で怖いのは、いびきそのものより、何も決めていない状態でその夜を迎えることでした。あのカプセルの夜、私は仰向けになりかけては起き上がることを繰り返して、眠りも翌日の頭も差し出してしまいました。音を出さないことに全部を賭けて、いちばん大事な休息を削ったわけです。狙うべきは、音をゼロにすることではなく、その夜を自分も周りもできるだけ削られずに通り抜けることでした。

やることを、順番に一度だけ並べておきます。予約の段階で、仕切りと姿勢のできるだけ上を選ぶ。出発の前夜に、狭さを家で下見して、支えを一つだけ決める。当日は、仕込んだ支えを当てて、条件を寄せる手を一つか二つ足したら、あとは体を休ませることを優先する。そして、無音と吸い直しの音にだけは気を配る。ここまでが、この記事の範囲です。相部屋一般の立ち回りや、今夜その場の細かい手、入院の大部屋の準備は、それぞれ別の記事に置いてあります。

かく側の備えは、その場の根性ではなく、前もっての段取りに宿ります。当日にできることが少ないというのは、悪い知らせのようでいて、裏を返せば、前もって手を打てば当日の運任せを減らせるということです。私がこの数年で学んだのは、出先の夜に強くなる方法ではなく、出先の夜を怖くしない準備の順番のほうでした。

妻
出張の予定が近いので、まず何からやればいいですか
静山静山
予約がまだなら、選び分けの三手順から。もう取ってあるなら、前夜の下見だけでも十分に違います。どちらも、家で数分あればできることです。

そして、これは出先の夜だけの話ではありません。出先で縮こまる根っこには、家で鳴っているいびきそのものがあります。私がカプセルの夜に思い出したのが、家で妻が聞いていた音だったように、外の夜と家の夜は地続きです。家の側が軽くなれば、出先の夜の怖さも、少しずつ小さくなっていきます。軽くしていく前に、その家の音が体のどこで鳴っているのかだけでも、音がどこで鳴っているのか、正体に見当をつける手順でしぼっておくと、次の一手を選ぶ迷いが減ります。

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この記事を書いた人

静山

静山 |いびきスコア142点からの30日再現実験・進行中

静山(しずやま)/40代。長年の爆音いびきで家族に別室を言い渡されかけた当事者。いびきラボのスコア(開始時142点)を毎晩記録し、舌・喉・顎・呼吸の自宅トレ『気道力メソッド』で下げていく過程をすべて公開している。医者ではないので治療の話はしない。自宅でできることだけを、実測の記録つきで書く。

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