電車や授業中のいびきが恥ずかしい人へ|公共の場のうたた寝の対処

電車でうとうとして、はっと目を覚ましたら、向かいの人がこちらを見ていた。自分は寝ているあいだ、どんな音を出していたんだろう。あの一瞬の凍りつきを、私も知っています。
家のいびきは家族への申し訳なさですが、公共の場でのそれは、見知らぬ人に無防備な自分を見られる恥です。この記事は、電車や授業中など公共の場でのうたた寝いびきの、恥のしのぎ方だけを並べます。
この記事の目次
公共の場のいびきは、家のいびきと恥の種類が違う
いびきの悩みは、たいてい家族との話です。妻や恋人に申し訳ない、という気持ちが中心にあります。ところが電車や授業中のうたた寝で鳴らしてしまう音は、少し種類の違う恥でした。相手が、二度と会わないかもしれない見知らぬ人に変わるからです。

家のいびきなら、翌朝に謝ることも、事情を話すこともできます。相手は自分を知っている人です。けれど公共の場では、謝ることも、最近疲れていてと言い訳することもできず、音と寝顔だけが先に届いてしまう。しかも、こちらが目を覚ましたときには、相手はもう視線を外している。何をどれだけ聞かれたのか、確かめようがありません。この確かめようのなさが、公共のうたた寝いびき特有の居心地の悪さの正体だと思います。
もう一つ、この恥には逃げ場のなさがあります。家なら別の部屋へ移れます。ホテルの個室なら扉で音を閉じられます。でも走っている電車の中では、隣の席へ移ったところで同じ車両にいることに変わりはなく、途中で降りて仕切り直すわけにもいきません。逃げられない場所で、自分では止められない音を出しているかもしれない。この二つが重なると、同じいびきでも重さがまるで違ってきます。
先に立場を書いておきます。私は四十五歳、いびきをかく側の当事者です。計測アプリの初回スコアは142点でした。私は医者ではありませんし、医療者でもありません。だから診断や治療の中身には立ち入りません。ここで書けるのは、公共の場で自分がどう縮こまり、その恥をどう軽くしてきたかだけです。
私のケース:帰りの電車で、向かいの人の視線で目が覚めた
この恥を、私は身をもって知っています。自分の音を測るより前、まだ鼻に貼るテープや口をとめるテープを試しては、数晩で引き出しにしまっていた頃の話です。
私のケース:帰りの電車で寝落ちして、向かいの人の視線で目が覚めた
残業で遅くなった帰り、空いてきた電車でようやく座れた夜でした。座って揺られているうちに、覚えのないまま意識が落ちていました。はっと目が覚めたのは、向かいの席に座っていた人が、こちらをじっと見ていたからです。目が合うと、その人はすっと視線を窓の外へ移しました。
その数秒で、頭の中を一気に計算が走りました。自分はいつから寝ていたのか。口は開いていたのか。あの、家で妻が聞いていたはずの低い音を、この車両で、知らない人たちに聞かせていたのではないか。確かめる方法はどこにもありません。向かいの人はもう外を見ているし、隣の人は携帯に目を落としている。誰も何も言わないぶん、かえって全員が気づいていたような気がして、次の駅で立ち上がる人がいるたびに、自分の音のせいで席を移ったのではないかとまで考えました。
その日から、私は電車で座るのが少し怖くなりました。座れたらうれしいはずなのに、座った瞬間に、また落ちるかもしれないという緊張が先に来る。眠らないように携帯をいじり続けて、降りる駅では頭に霧がかかっている。それを何度か繰り返しました。
あとから自分の音が142点だと知ったとき、真っ先に思い出したのが、この電車の夜でした。家で妻に聞かせていた音を、あの車両で、見知らぬ人にも聞かせるところだった。いや、たぶん実際に聞かせていた。怖かったのは音そのものより、その場で何の備えもしていなかった自分のほうだったと、今は思います。
この夜から持ち帰ったことが二つあります。ひとつは、公共の場のうたた寝いびきの不安は、鳴った瞬間に湧いてくるように見えて、実は座る前の備えの不足から来ているということ。もうひとつは、その不安に効く手のほとんどが、鳴ってからではなく、座る前と乗る前のほうに残っているということでした。次の章から、まず場面ごとの難しさを分けて、それから座る前の手順を並べます。
場面ごとに、恥のかたちは違う
ひとくちに公共の場のうたた寝いびきと言っても、場面によって難しさは変わります。かく側にとって何がつらいのかを、場面ごとに分けて並べます。
通勤電車
座って一定のリズムで揺られると、人は落ちやすくなります。しかも向かいと両隣に人がいて、静かな車内ほど音が目立つ。私が縮こまったのも、この場面でした。始発から終点まで同じ顔ぶれということは少ないので、多くは一度きりの気まずさで済むのが、まだ救いです。逆に言えば、毎日の通勤で同じ時間帯の同じ車両に乗る人は、その一度きりが積み重なっていきます。
路線バス・昼間の移動
バスの座席は、背もたれに頭を預けると顎が上を向きやすく、電車より鳴りやすい姿勢になりがちです。エンジン音がある程度は紛らせてくれますが、信号待ちで止まった瞬間に、音だけが浮くことがあります。座ったまま顎の角度をどう作るかは、次の章に手順で置きます。
授業や会議、講義
ここは通勤電車と逆で、顔ぶれが固定されます。毎回同じ教室、同じ席の並び、同じメンバー。だから一度鳴らすと、次からその席に座るたびに思い出す。一度きりでない恥になりやすいのが、この場面の重さです。ただ、授業中に毎回落ちてしまうほど眠いということ自体が、実は夜の眠りからのサインかもしれません。日中の居眠りといびきがどう繋がっているか、そして眠気そのものの危うさは、授業中や仕事中の居眠りといびきの繋がりのほうに譲ります。この記事が扱うのは、あくまでその場の恥のしのぎ方までです。
病院や役所の待合室
順番を待つあいだ、手持ちぶさたで気がゆるむと落ちます。長椅子に浅く腰かけていると、頭が後ろの壁に当たって顎が上を向き、鳴りやすい形になります。ここも、座り方の角度で少しだけ変えられます。

ここまで挙げたのは、どれも「日中に座ったまま、短く落ちてしまう」場面です。同じ公共でも、夜に横になって眠る逃げ場のない空間、たとえばカプセルホテルや夜行バス、ネットカフェは、姿勢も時間の長さもまるで違うので、備え方も別になります。そちらはカプセル・夜行バス・ネカフェでいびきが不安な人へにまとめてあるので、泊まりの夜が近い方はそちらへどうぞ。この記事では繰り返しません。
恥は、鳴ってからではなく座る前に減らせる
ここが、この記事のいちばん書きたいところです。公共の場のうたた寝いびきは、鳴った瞬間にどうにかする問題ではなく、座る前と乗る前に手を打つ問題でした。あの電車の夜、私に足りなかったのも、テープでも道具でもなく、この座る前の一手でした。

私が教材で最初に腑に落ちたのは、いびきそのものの理屈ではなく、角度の考え方でした。顎が上を向くと、のどの奥が狭くなって鳴りやすい。少し引くと、通り道が保たれやすい。これは眠っている家のベッドでの話ですが、この角度の考え方は、座ったままのうたた寝にそのまま当てはめられます。以下は、その考え方を電車やバスの座席に落とし込んだ、私のやり方です。
座ったまま短く仮眠するときの、角度の作り方(3分)
- 窓側か端の席を選び、頭を横の窓枠、壁、仕切りに預けます。頭を真後ろに倒すと顎が天井を向いて鳴りやすいので、真後ろではなく横に預けるのがねらいです。
- カバンか畳んだ上着を胸の前で軽く抱え、上体をほんの少しだけ前に傾けます。こうすると顎が自然に引けて、天井を向きにくくなります。
- その角度のまま、口が軽く閉じているかを一度だけ確かめます。閉じようと力むのではなく、顎さえ上がっていなければ、口はたいてい自然に閉じています。
- スマホのアラームを短く区切ります。深く眠り込むほど、のどまわりの張りが抜けて鳴りやすくなります。その仕組みそのものは別の記事に譲りますが、公共の場では、深く落ちる前に切り上げるのが現実的です。
回数の目安:一区間、または15分ほどまで。持ち込む支えは、いつも使っているカバンや上着で十分です。
注意が二つあります。ひとつ、首や肩が痛むなら、その日はやめること。無理な角度で固定すると、鳴らない代わりに別のところを痛めます。ふたつ、これは音をゼロにする手ではなく、いちばん鳴りやすい角度だけを外す手だということです。座ったうたた寝で音を完全に消す方法は、私が試した範囲にはありませんでした。だから、消すのではなく、目立ちにくくして席に着く、というくらいの心づもりがちょうどいいと思います。
\ 電車の15分を、家の夜が支える /
座る前の角度でしのげるのは、その場の恥までです。いびきそのものを原因の側から軽くしていく組み立ては気道力メソッドにまとめてあります。原因タイプ別の自宅トレと三十日の記録を、道具なしの買い切りで一冊にしています。
教材の内容を見る※18歳未満は登録できません
その場でできることの限界と、見逃せないサイン
ここまで座る前の話を続けてきたのは、鳴り始めてからできることが、思いのほか少ないからです。眠ってしまえば、いびきをスイッチのように止める手は、私が調べた範囲にも、自分で試した範囲にもありませんでした。だから当日その場では、前もって作った角度を思い出して頭を預け直すくらいしかできません。準備を勧める理由そのものが、当日の手の乏しさにあります。

そもそも、そんなに眠いのはなぜか
電車に乗るたび、授業が始まるたびに落ちてしまう。座った瞬間に意識が飛ぶ。これは、公共の場の恥という話の手前に、もう一つの問いを立てています。夜、足りるだけ寝ているつもりなのに、なぜ昼にそこまで眠いのか、です。いびきをかく人ほど、眠っているあいだに眠りが細切れになって、寝た時間のわりに休めていないことがあるとされています。座った瞬間に落ちてしまうほど眠いなら、恥をどう消すかより先に、その眠気のほうを見たほうがいい。日中の居眠りといびきの繋がりは、さきほど触れた居眠りの記事にまとめてあります。恥は結果で、眠気のほうが原因のことがあるからです。
ここだけは、恥ずかしさより先に確かめてほしい
自分のうたた寝いびきが、一定に鳴り続けるのではなく、ふっと無音になって、しばらくしてから大きく吸い直す。この形が混ざっているなら、睡眠時無呼吸症候群のサインとされているものです。これは、座り方や座る前の備えでしのぐ話ではありません。眠っているあいだに呼吸が止まっていると家族に指摘されたことがある、あるいは、しっかり寝たはずなのに日中の眠気が強くて、会議中や運転中にも落ちそうになる。このどちらかに心当たりがあるなら、座り方を工夫する前に、一度医療機関で相談してください。私は医者ではないので、ここから先の判断は書けません。書けるのは、その音は座席の角度で様子を見る範囲とは別だ、という線引きまでです。
とくに、運転中に眠気で落ちそうになるのは、恥では済まない領域です。通勤の電車で鳴るのが気になる方の中には、日によって車を運転する方もいると思います。運転に眠気が出ているなら、角度の手順を試す順番ではありません。受診を先にしてください。
見られる恥の下には、家の夜がある
最後に、この記事で並べたことを置き直します。公共の場でうたた寝いびきをかく恥は、鳴った瞬間に湧くように見えて、実は座る前の備えと、その奥にある夜の眠りから来ていました。座る前の角度でその場をしのぎ、無音と吸い直しの音にだけは気を配る。ここまでが、この記事の範囲です。
ここまでは、自分がかく側の話でした。もし今これを読んでいるのが、夫や彼氏、彼女が電車や公共の場でうたた寝いびきをかいているのに気づいて、どう伝えようか迷っている側なら、話は別です。伝え方には、相手との関係ごとにコツがあります。彼氏に伝えるなら彼氏のいびきの伝え方、彼女に伝えるなら彼女のいびきの伝え方に、切り出す順番と言い方をまとめてあるので、そちらへ譲ります。この記事では、伝える側の手順までは書きません。
そして、これは電車やバスの中だけの話ではありません。公共の場で縮こまる根っこには、家で毎晩鳴っているいびきそのものがあります。私があの電車の夜に思い出したのが、家で妻が聞いていた音だったように、外の恥と家の音は地続きです。家の側が軽くなれば、公共の場で身構える回数も、少しずつ減っていきます。
私自身は、あの電車の夜に縮こまったまま数年を過ごし、妻に別室の話を切り出されかけて、ようやく計測を始めました。初回が142点でした。順番としては遠回りでしたが、今は、恥をその場でしのぐことと、夜そのものを変えることを、別の作業として分けています。しのぐのは今日、変えるのは三十日、というくらいの分け方です。
もし、無音や吸い直しの音、強い眠気といったサインに心当たりがあるなら、家で手を入れる前に受診が先です。当てはまらないなら、座る前の角度でその場をしのぎつつ、家の夜を落ち着いて変えていく。この二段構えが、公共の場の恥に振り回されない道だと思います。
