授業中・仕事中の居眠りといびき|昼の眠気が危ない場面

授業中や会議中に、こくりと落ちて、はっと目覚める。あの一瞬を、私はずっとただの寝不足で片づけていました。
先に書いておきます。夜のいびきと、昼の居眠りは地続きです。この記事では、落ちる場面と、その眠気が持つ危なさのほうを並べます。眠りの仕組みや受診は、担当の記事へ渡します。
この記事の目次
「こくり」と落ちる、あの一瞬の話
疲れているとか、だるいという話ではありません。この記事で扱うのは、もっとはっきりした現象です。授業中、会議中、昼下がりの机で、意識が一度ふつりと切れて、はっと戻る。まわりの声が急に遠くなって、気づいたら数秒か数十秒、記憶が飛んでいる。あの「こくり」を、くり返している人の話です。

ただ眠いのと、実際に落ちるのとは、地続きのようでいて段が違います。眠いだけなら、まだ自分で起きていられる。けれど居眠りは、起きていようという意思をまたいで、勝手に落ちる。ここが厄介なところで、意思で止められないということは、止めたい場面でも止められないということです。授業や会議なら気まずいで済みますが、場面によっては気まずいでは済みません。その危なさの話は、この記事のあとのほうで別に立てます。気まずいで済むほうの場面、つまり電車や授業中に落ちて音を聞かれるほうの恥は、電車で寝落ちしたときの恥のしのぎ方に、座る前に鳴りにくくする角度まで置いてあります。
私は四十五歳、いびきの当事者です。医者ではありません。だからここで診断はしませんし、居眠りの原因が全部いびきだとも言いません。ただ、自分の居眠りの出どころを、昼の中だけで探して何年も外していた人間として、夜の側に候補を一つ足す話をします。
まず押さえておきたいのは、居眠りといびきが、時間も場所も離れているせいで結びつきにくいことです。落ちるのは昼の明るい部屋で、いびきをかいているのは夜の暗い寝室。本人はどちらの現場も、その場では見ていません。夜の音は眠っているから聞こえないし、昼の数十秒は記憶から抜けている。二つとも自分の死角で起きているので、線を引くには意識してつなぎにいく必要があります。
なぜ夜の音が、昼の「こくり」になるのか
順番だけ、大きく描いておきます。夜のあいだ、いびきをかいている時間は、喉のどこかが狭いまま呼吸が続いています。そのぶん体は夜のうちに休みきれず、受け取れるはずだった回復が目減りする。目減りしたぶんが、昼になって居眠りという形で戻ってくる。おおまかには、この一本の線です。細かい仕組みは、すぐあとで担当の記事に渡します。

ただし、いびきがどうやって眠りの深いところを削るのか、その仕組みそのものは、この記事の担当ではありません。深い眠りが連続した時間でしか作れないこと、いびきがその連続を切っていること、そして「かいて深く眠れている」がなぜ逆なのかは、睡眠の質といびきの記事に分けてあります。ここで機序を書き直すと話が二重になるので、線だけ引いて先へ渡します。
もう一つ、渡す先があります。昼のだるさや疲れを「もしかして夜かもしれない」と疑いはじめる、その入口の話です。眠気に蓋をしていたことに気づくための自覚チェックは、いびきで疲れる記事のほうが受け持っています。この記事が受け持つのは、だるさより一段進んで、実際に落ちてしまう居眠りと、その落ちることの危なさのほうです。
だるさと居眠りを、あえて分けて書いているのには理由があります。だるさは、休めばある程度は戻ります。だから多くの人は、まず横になる時間を足そうとする。私もそうでした。けれど居眠りは、休む時間を足しても、意思をまたいで落ちるほうは残ることがあります。落ちる側に来ている人は、時間を足す前に、まず落ちている場面のほうを確かめる番だと私は考えています。
会議で顎が落ちて、夜と昼がつながった
私のケース:会議中にうとうとして、はっと目覚めた。夜の音と昼の眠気が繋がった瞬間
その日のことは、はっきり覚えています。午後の会議で、資料を追っていたはずが、気づいたら人の声が遠くなっていました。次の瞬間、自分の顎ががくんと落ちて、その反動で目が覚めた。手元の紙には、書きかけの字がそのまま止まっていて、どこから記憶が抜けたのか、自分でも分かりませんでした。数秒だったのか、もっとだったのか。まわりが気づいたかどうかを、そのあとしばらく気にしていました。
それまで私は、昼の眠気を年のせいにしていました。四十を過ぎれば午後は眠い、で片づく。同年代なら誰でも頷いてくれる説明です。けれど、会議で顎が落ちるのは、眠いとは少し違う出来事でした。眠いなら、まだこらえていられる。あれは、こらえる前に落ちていた。意思の外で起きたことに、そのとき初めて引っかかりました。
その引っかかりが夜とつながったのは、しばらくあとでした。別室を切り出されかけた夜の翌日に、初めていびきを計測して、朝に142点という数字が出た。残っていた録音を再生すると、低く長く引きずる音が延々と続いていて、静かな時間のほうが短いくらいでした。呼吸が止まる無音は入っていませんでしたが、これだけ夜に喉を鳴らしていたのなら、昼に意思をまたいで落ちるのも、責められた話ではなかった。会議の顎と、夜の録音が、そこで一本につながりました。
おかしなもので、つながった瞬間に少し楽になりました。落ちるのは気合が足りないからだと、どこかで自分を責めていたからです。夜のあいだ休みきれていないのなら、昼に落ちるのは体の側の反応で、性根の問題ではない。責める場所を間違えていた、と分かっただけで、対策の向きが変わりました。
この体験で私が学んだのは、居眠りを「気合の話」から外すことでした。会議で落ちた自分を、意思が弱いと責めているあいだは、対策も精神論にしかなりません。コーヒーを増やす、頬をつねる、気を張る。どれも、意思で落下を止めようとする方向で、そして意思をまたいで落ちるものには、ことごとく効きませんでした。向きを変えたのは、落ちる場所を数え出してからです。
その居眠りには、危ない場面がある
ここからが、この記事がいちばん書いておきたいところです。居眠りは、場面によって意味の重さがまるで違います。会議で顎が落ちるのは気まずいで済みます。授業でうとうとするのも、多くは笑い話の範囲です。けれど、同じ「こくり」が、ハンドルを握っているあいだに来たら、笑い話では済みません。

意思をまたいで落ちるということは、落ちてはいけない場面でも落ちうるということです。運転、機械の操作、高いところでの作業、駅のホーム。こうした場面での数秒の意識の途切れは、そのまま取り返しのつかない結果につながります。私が居眠りを年のせいで軽く扱っていたころ、いちばん考えていなかったのが、この場面ごとの重さの違いでした。眠気そのものより、眠気が出る場所のほうが問題だったのです。
そこで、教材のなかで私が最初にやったのが、居眠りを場面ごとに仕分ける記録でした。眠気を消す道具ではありません。落ちた場所を並べて、危ない帯にどれだけ入っているかを、自分の目で確かめるためのものです。
居眠りマップ:落ちた場面を、危険度で仕分ける(週1・5分)
- 一週間、うとうとした場面を、その日のうちにメモします。時刻と場所だけで十分です。「15時・会議」「19時・帰りの電車」のように、一行ずつ書きます。こらえられた眠気ではなく、実際に落ちた、あるいは落ちかけたものだけを拾います。
- 書いた場面を、二つの帯に分けます。落ちても危なくない帯(自宅のソファ、電車の座席、休憩中)と、落ちたら危ない帯(運転中、機械の操作中、駅のホーム、子どもを見ているとき)です。色を分けても、印をつけるだけでも構いません。
- 危ない帯に一つでも入っていたら、そこで手順は止めます。ほかの記録を続けるより先に、次の節の受診の話へ進んでください。マップは、ここで役目を終えます。
- 危ない帯が空なら、安全な帯の時刻を並べて、毎日ほぼ同じ時間に来ているかを見ます。毎日同じ時間に落ちているなら、その日の予定ではなく、夜の側を疑う手がかりになります。
回数の目安:週に一回、5分まで。毎日つけると、書くこと自体が目的になって続きません。
注意が二つあります。ひとつ、危ない帯を、我慢や気合で埋めようとしないこと。運転中に落ちるのを、根性で乗り切る話にしてはいけません。ここは仕分けであって、克服する場所ではありません。ふたつ、安全な帯だからと安心して放置しないこと。いまソファでしか落ちていなくても、状態は年単位で動きます。マップは一度で終わりにせず、季節が変わったころにもう一度だけ取り直してください。
\ 落ちる場所を仕分けたら、次は組み立て /
危ない帯が空だった方へ。原因のタイプに合わせて、夜の側に何をどう組むかは気道力メソッドにまとめてあります。今日はまず、落ちた場所を並べるところまでで十分です。
教材の内容を見る※18歳未満は登録できません
その眠気は、様子見ではなく受診かもしれない
前の節で危ない帯に触れた方は、ここが本題です。日中の眠気には、自宅で様子を見てよいものと、そうでないものがあります。線を先に引いておきます。

次のどれかに心当たりがあるなら、居眠りマップやセルフケアの前に、医療機関で相談してください。
- 運転中や機械の操作中に、意識が飛ぶような強い眠気が出たことがある
- 寝ているあいだに呼吸が止まっていると、家族に指摘されたことがある
- いびきが途切れて無音になり、そのあと大きく吸い直す音がすると言われた
- どれだけ寝ても日中の眠気が強く、座っているとすぐ落ちる
とくに、呼吸が止まっているという指摘と、運転に出るほどの強い眠気は、睡眠時無呼吸症候群のサインとされているものです。このときは、喉を鍛える順番でも、記録を貯める順番でもありません。受診を先にしてください。もう一度書きますが、私は医者ではないので、当てはまるかどうかの判定を自分で下さないことのほうが大事です。迷ったら、受診の側に寄せてください。
どの科へ行くか、自宅で一晩つけて調べる簡易検査がどんなものかは、この記事では立ち入りません。相談先の分け方から検査の流れまでは、いびきは何科かの記事にまとめてあります。上のサインに当てはまった方は、この記事の続きより先に、そちらへ進んでください。
昼の「こくり」を、軽く見ないために
この記事でやりたかったのは、居眠りを二つの意味で見直すことでした。ひとつは、昼の「こくり」の出どころに、夜のいびきという候補を足すこと。もうひとつは、その居眠りを場面ごとに見て、危ない帯に入っていないかを確かめることです。眠気そのものより、眠気が出る場所のほうを先に見る。私が長く抜けていたのは、この視点でした。

昼のだるさや疲れを、まず「もしかして夜かも」と疑う入口はいびきで疲れる記事に、なぜ長く寝ても回復しないのかという仕組みは睡眠の質の記事に置いてあります。この記事は、その手前でも先でもなく、実際に落ちてしまう居眠りと、その危なさだけを受け持ちました。疑う、確かめる、仕組みを知る、という並びの、確かめるの一歩を担当した記事だと思ってください。
最後に、自分に言い聞かせていることを書いておきます。居眠りは、気合の問題に見えて、気合ではどうにもならない出来事です。意思をまたいで落ちるものを、意思で止めようとするから、いつまでも自分が弱いからで終わってしまう。落ちる場所を並べて、危ない帯を先に手当てして、夜の側に手を入れる。順番を変えただけで、私は自分を責めるのをやめられました。私の実測の記録は実測30日ログに置いてあります。
