「なぜいびきをかくの?」を一番やさしい言葉で|鳴る理由の入門

「そもそも、なんで鳴るの?」妻にそう聞かれて、私はうまく答えられませんでした。数字は出せても、理由が一言で出てこなかったのです。
この記事は、その質問に一番やさしい言葉で答えるための入門です。むずかしい理屈は使いません。まず「なぜいびきは鳴るのか」を、あなたが一文で言えるところまで一緒にいきます。
この記事の目次
「なぜ鳴るの?」に、まず一言で答える
いびきは「なぜ」鳴るのか。むずかしい言葉を先に置くと、そこで読むのをやめたくなります。だからまず、一番みじかい答えから書きます。

寝ているあいだに、のどの奥の空気の通り道がせまくなって、そこを通る空気が、まわりのやわらかいところをふるわせている。そのふるえが音になったものが、いびきです。
ここだけ持って帰ってもらえれば、この記事の役目は半分終わりです。残りは、この一文をもう少しかみくだいて、家族に聞かれても答えられる言葉にしていくだけです。
先に立場を書いておきます。私は医者ではありません。四十五歳の、いびきの当事者です。ですから、ここで書けるのは病気の診断ではなく、「なぜ鳴るのか」をやさしい言葉に言い換えることまでです。診断や治療の中身には立ち入りません。
「なぜ」に一言で答えにくい、三つの理由
いびきの「なぜ」がすっきり答えにくいのには、わけがあります。むずかしいからではなく、そもそも答えにくい形をしているのです。
- 理由が一つに決まらない。体重、鼻づまり、お酒、寝る姿勢、年齢。どれか一つだけが犯人ということはあまりなく、いくつか重なって初めて音になります。だから「なんで?」に一語で返せません。
- 鳴っている場所が、体の奥で見えない。音の出どころはのどの奥です。鏡でも見えないし、手でも触れません。見えないものは、言葉にしづらいのです。
- 本人にはいちばん聞こえない。いびきは眠っているあいだの音なので、かいている本人だけが聞いていません。人に言われて初めて知る。これも「なぜ」を遠くします。
この三つが分かっているだけで、答えられなくても落ち込まずにすみます。答えにくいのは、あなたの知識が足りないからではありません。
やさしい言い換え:せまい道を、空気が急いで通る
さっきの一文を、もう少しやさしく言い換えます。理屈ではなく、身近なものにたとえます。絵が一枚、頭に浮かべば十分です。

「せまいところを、空気が急いで通る」
細いすきまを風が通ると、音が鳴ります。すきま風がヒューと鳴るのも、口をすぼめて息を吐くと音が出るのも、同じことです。広い道なら静かに通れる空気が、せまい道だと急いで通ることになって、音を立てる。いびきも、これと同じです。ふだんは静かに通っている空気が、寝てせまくなった通り道で、急いで通るから鳴ります。
「やわらかいところが、ふるえる」
のどの奥は、硬い骨ではなく、やわらかい部分でできています。のれんやカーテンのすそが風でゆれるように、通り道のまわりのやわらかいところが、空気を受けてこまかくふるえる。そのふるえが、あの低い音の正体です。かたい鉄の管なら、風が通っても鳴りません。やわらかいから、ふるえて鳴るのです。
言い換えは、ここでやめておきます。のどのどこが、どういう順番で、なぜふるえるのか。その仕組みそのものを図で解剖したものは、いびきの仕組みを図でたどる記事に置いてあります。この入門では、「せまい道を空気が急いで通り、やわらかいところがふるえる」という絵が浮かべば、それでじゅうぶんです。
「なぜ」は一つに決まらない、をやさしく
「なぜ鳴るの」と聞かれたとき、多くの人が理由を一つに決めようとします。私もそうでした。でも、そこがつまずきの入口です。

よくある「決めつけ」を並べてみます。どれも半分は当たっていて、でも、それだけでは足りません。
- 「太っているから」/体重は関わりますが、やせていても鳴る人はいます。体重は理由の一枚であって、全部ではありません。
- 「口を開けて寝ているから」/口が開くのは、結果のこともあります。奥がせまくて口で息をしている、という順番のこともあるのです。
- 「もう年だから」/年齢で通り道の支えはゆるみます。ただ、それは「だからどうしようもない」という意味ではありません。
- 「お酒のせい」/飲んだ夜に鳴りやすくなるのは本当です。ただ、飲まない夜も鳴るなら、お酒は重なった一枚にすぎません。
つまり「なぜ」の答えは、たいてい一つではなく、いくつかが重なった結果です。ここを「重なり」で捉えられると、急に楽になります。犯人を一人にしぼろうとして外し続ける、という遠回りをしなくてすむからです。重なった一枚のうち、そばで吸う煙まで数に入れて家庭で一緒に減らせるものは、タバコと受動喫煙がいびきに乗るしくみで確かめられます。
では、その重なる理由にはどんなものがあって、どう並べればいいのか。動かせる理由と動かせない理由の分け方まで含めて、いびきの原因を全部並べる記事にまとめました。この入門では、「理由は一つじゃない、重なっている」という一点だけ、持っておいてください。
家族の「なんで?」に、やさしく返す言葉
この記事がいちばん役に立てるのは、ここだと思っています。いびきの理由を正確に説明することよりも、隣で聞いている家族の「なんで?」に、一言で返せる言葉を持っておくこと。それだけで、朝の空気がずいぶん変わります。
よく出る三つの「なんで?」に、やさしい返しを用意しておきます。むずかしく言う必要はありません。
- 「なんで静かな日もあるの?」→「その日その日で、通り道のせまくなり方がちがうから」。疲れ、お酒、鼻の調子で、同じ体でも夜ごとに変わります。
- 「なんで急にひどくなったの?」→「体が急に変わったというより、重なる理由がこの時期に増えたから」。太った、飲む日が増えた、鼻がつまる季節になった、が足し算になります。
- 「なんで昼は鳴らないの?」→「起きているあいだは自分でのどを開けているけど、寝るとその力が抜けるから」。ここは仕組みの話なので、くわしくは前に挙げた記事にゆずります。
大事なのは、正確さより、黙りこまないことです。答えを探しながら黙ってしまうと、相手には「向き合ってくれない」と映ります。一言あるだけで、放っておいていないことが伝わります。
自分のいびきを、一文で言えるようにする(3ステップ)
お金も道具も要らない、今日その場でできる手です。私が教材を始めるときに、いちばん最初にやったのも、これでした。
- この記事の一番みじかい答えを、紙に一文だけ書き写す。「寝ると、のどの奥がせまくなって、空気がやわらかいところをふるわせている」。自分の言い回しに直して構いません。
- その一文を、声に出して一度読む。読んだことのある文は、人に説明するときにつっかえずに出てきます。頭の中だけに置くと、いざ聞かれたときに出てきません。
- 「なんで静かな日もあるの?」への返しを、一言だけ決めておく。「その日でせまくなり方がちがうから」。返しを一つ用意しておくだけで、次に聞かれたとき黙らずにすみます。
回数の目安:最初に一回。紙に書くのは5分まで。うまく言えたら、それ以上くり返さなくて構いません。
注意が一つあります。ここで完璧な説明をしようとしないこと。相手が本当に知りたいのは、正確な医学ではなく、あなたが放っておいていないという事実のほうです。むずかしく言うほど、かえって伝わりません。短くて、自分の言葉であるほど届きます。
\ 一文の次は、順番 /
「なぜ鳴るのか」が言えるようになったら、次はどこから手を入れるかです。原因の組み合わせごとの並べ方と続け方を気道力メソッドにまとめてあります。まずは今日、一文を書くところからで十分です。
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私が、妻の「なんで鳴るの」に答えられなかった日
私のケース:妻に「なんで鳴るの」と聞かれ、うまく答えられなかった自分の言葉不足
順番から書きます。私はまず、グッズを二、三年買い続けました。鼻に貼るテープ、口をとめるテープ、通販の型取り式マウスピース、いびき対策の枕。どれも数晩で引き出しに戻りました。妻は自分用の耳栓を買っていました。
その買い足しが終わったのは、妻から「今日は下で寝るね」と言われた夜でした。責める言い方ではなかったぶん、こたえました。翌夜、初めて計測アプリを枕元に置いて、朝に142点という数字が出ました。残っていた録音には、低く長く引きずる音が続いていました。
問題は、その少しあとです。ある朝、台所で妻に、ふと聞かれました。「そもそも、なんで鳴るの?」私は、答えられませんでした。数字は出せる。録音も聞かせられる。なのに、なぜ鳴るのかを一言で言えなかったのです。太ってるからかな、と口ごもって、それで会話が終わりました。
そのとき気づいたのは、私はずっと「どう止めるか」ばかり検索していて、「なぜ鳴るのか」を一度も自分の言葉にしていなかった、ということでした。止め方は山ほど調べたのに、いちばん近くの人に聞かれた「なぜ」に、何も返せなかった。この記事を書いているのは、あの朝の言葉不足がきっかけです。
いまなら、こう返します。寝るとのどの奥がせまくなって、空気がやわらかいところをふるわせている。理由は一つじゃなくて、いくつか重なっているらしい。それだけでも、あの朝の沈黙よりは、ずっとましだったはずです。
この節を書いたのは、答えられなかった自分を責めるためではありません。逆で、止め方を探す前に、なぜ鳴るのかを一度やさしい言葉にしておくと、いちばん近くの人との時間が変わるということを、自分の失敗で残しておきたかったからです。
ただし、この順番より先に受診してほしいサインがあります
やさしい言い換えを用意するより先に、医療機関へ、という場合があります。次のどれかに心当たりがあるときです。
- 眠っているあいだに「息が止まっていた」と家族に言われたことがある
- 録音に、音が途切れて無音になり、そのあと大きく吸い直す音が入っている
- 寝たはずなのに日中の眠気が強く、会議中や運転中にうとうとする
これらは睡眠時無呼吸症候群のサインとされているものです。私自身は、録音を聞いた範囲では、呼吸が止まる無音は入っていませんでした。だから自宅でできることを選べています。当てはまる方は、言葉をそろえるより先に、何科へ行けばよいかをいびきは何科かの記事で確かめて、受診を優先してください。
「なぜ」が分かった次に、やること
「なぜ鳴るのか」が一文で言えるようになったら、入門はここで卒業です。次に進む道は、大きく三つに分かれます。どれも、この入門で描いた絵を持ったまま読めます。

- 理由を数えたい人は、原因の並べ方へ。自分の場合、どの理由が重なっているのか。動かせる理由と動かせない理由の分け方まで、いびきの原因を全部並べる記事にあります。
- 仕組みそのものを知りたい人は、解剖の記事へ。のどのどこが、どうふるえて鳴るのか。図でたどったものがいびきの仕組みの記事です。この入門の一文を、もう一段くわしくしたものです。
- サインが当てはまる人は、受診へ。前の節のサインに心当たりがあるなら、そちらが先です。順番を飛ばさないでください。
もう一度だけ書いておきます。私は医者ではありません。この入門でできるのは、「なぜ鳴るのか」をやさしい言葉に置き換えるところまでです。その先の、診断や、自分に合った手の入れどころは、原因を数え、必要なら受診し、そのうえで自宅でできることを選ぶ、という順番になります。あせって道具から入るより、この順のほうが遠回りになりにくい、というのが私の実感です。
