あごが小さいといびきをかく理由と自宅でできること

痩せているのにいびきをかく。それはあなたの努力不足ではなく、顎の奥行きの話かもしれません。
顎が小さい、または後ろに引っ込んでいると、舌の居場所が足りず、眠ると喉のほうへ落ちます。骨格そのものは変えられませんが、その上に乗っている筋肉の緊張はゆるめられます。私が毎日やっている手順まで書いていきます。
この記事の目次
顎が小さいと、なぜいびきが出るのか
いびきは、眠っている間に空気の通り道が狭くなり、そこを通る空気が喉のやわらかい部分を震わせて出る音です。顎は、その狭くなる理由の中でも「自分ではどうしようもない」と思われがちな入口です。
下顎は、舌の土台です。顎が小さい、あるいは上顎に対して後ろに下がっていると、舌が収まるスペースがそのぶん足りません。起きている間は筋肉が舌を支えているので困りませんが、眠ると全身の筋肉がゆるみます。行き場のない舌は、重力にしたがって喉の奥へ下がる。そこが狭くなると、吸う息が乱れて音になります。
私が調べた範囲では、歯科や耳鼻咽喉科の解説でも、下顎が小さい、あるいは後退していると舌が後方に位置しやすく気道が狭くなりやすい、と説明されていました。

痩せているのにいびきをかく人に多い理由
いびきは太った人がかくもの、という思い込みは根強いです。私も家族に指摘されたとき、まずそれを疑いました。体重は標準、首も太くない、それでも音は毎晩出ていました。
体重が理由のいびきは、喉の外側についた脂肪が気道を押します。顎が理由のいびきは、内側のスペースがもともと足りません。押される側か、足りない側か。入口が違うので、体重を落としてもいびきが残ることがあります。痩せたのに変わらなかった人は、顎の側を疑う番が回ってきたということです。
痩せている人のいびきの理由として挙げられることが多いのは、次のあたりです。
- 下顎が小さい、または後ろに下がっていて、舌の居場所が足りない
- 鼻が通りにくく、寝ている間に口呼吸になっている
- 舌や喉まわりの筋肉が年齢とともにゆるんできている
- お酒や強い疲れで、その夜だけ筋肉が落ちている
- 扁桃や喉の奥のひだが、もともと狭いほうに寄っている
顎が小さいと言われる背景(食事・口呼吸・舌の位置)
そもそもなぜ顎が小さくなるのか。歯科と矯正の領域なので断定はしませんが、解説でよく並ぶ話は3つに整理できます。
ひとつは噛む回数です。やわらかい食事が増えて噛む回数が減ると、顎の骨に伝わる刺激も減り、成長期に育ちにくくなると説明されています。歯が並ぶ幅が足りず、歯並びが重なる形で表に出ることもあるようです。
ふたつめは口呼吸です。鼻が詰まって口が開いたままの時間が長いと、下顎は下がった位置に、舌は低い位置に居つきます。歯科の解説では、舌が上顎の天井に触れていることが上顎の広がりを助けているとされ、この崩れた状態を低位舌と呼んでいます。
みっつめは加齢と癖です。骨の大きさは大人になれば変わりませんが、顎を支える筋肉のこわばりや長年の噛みしめで、顎は本来の位置より閉じた場所に固定されていきます。「昔より口が開けにくい」人は、骨ではなくこちらが動いている可能性があります。
大人になってから手を出せるのは、後ろの2つです。とくに舌の位置は自宅の運動で持ち上げる方向に働きかけられる場所で、手順はいびきを止める舌トレーニングにまとめました。なお顎の狭さに鼻づまりや舌の筋力低下が重なっている人のほうが多いので、自分の主な入口はいびきの原因タイプ診断で確かめてください。
顎まわりを自宅で確かめる(奥歯の指2本と下顎の位置)
顎タイプかどうかは、鏡と自分の指があれば見当がつきます。ここでは顎に関わる3つだけを扱います。鼻や喉まで含めた5つのテストは診断記事のほうに置いてあります。
テスト1:奥歯と奥歯の間に、指が2本入るか(要点だけ)
背筋を伸ばして座り、奥歯と奥歯を離すことだけを意識して口を大きく開けます。その状態で、上下の奥歯の間に指が2本入るかを確かめます。前歯の見た目は気にしません。
楽に2本入るなら顎まわりに余裕があります。入らない、途中でつっかえるなら、顎が本来の位置より閉じた場所で固まっている可能性があります。私の場合は、指2本は入りませんでした。
そのうえで、注意を4つ。
- 無理に押し込まない。入るかを見るテストで、広げるための運動ではありません
- 指は縦に添えるだけにして、爪を立てない
- カクッと音がする、引っかかる、痛みが走る場合は中止して歯科で相談を
- 顎の開き具合は朝と夜で変わるので、比べるなら同じ時間帯で。また2本入ったから顎タイプではない、とも言い切れません
鼻・喉・舌・軟口蓋まで含めた全部の手順と判定はいびきの原因タイプ診断にあります。
テスト2:下の前歯が、上の前歯より後ろにないか
この記事の本題はこちらです。顎が「小さい」かどうかより、下顎が後ろに引けているかどうかのほうが舌の居場所に直結します。
- 軽く奥歯を合わせた状態で、唇だけを開きます。
- 鏡で、上下の前歯の位置関係を正面から見ます。
- 次にスマートフォンで、まっすぐ前を見た横顔を撮ります。
下の前歯が上の前歯よりかなり後ろに引っ込んでいる場合、下顎が後方にあると考えられます。横顔では、唇の下から顎先にかけてのラインが後ろへ流れていないかを見ます。口を閉じたときに顎先に梅干しのようなしわが寄る人は、唇を閉じるために顎の先の筋肉が働きすぎている状態で、これも下顎が後ろ寄りのときに出やすいと説明されています。
歯並びの評価そのものは私の領分ではないので、気になる人は歯科へ。ここで確かめたいのは、自分のいびきを体重ではなく顎の側から考える理由があるかどうか、その一点です。
テスト3:日中、奥歯が触れていないか

骨格は生まれつきですが、噛みしめは今の癖です。思い当たるものがあれば、顎まわりに余計な力がかかっている可能性があります。
- 気づいたときに、上下の歯が触れている(安静時の歯は軽く離れているのが本来の状態だとされています)
- 頬の内側に、噛み合わせの高さで白い線が走っている
- 舌の縁が波打っていて、歯の形の跡がついている
- 朝起きたときに顎が重い、こめかみや耳の前が疲れている
- 家族に、寝ている間の歯ぎしりの音を指摘されたことがある
私のケース:体重を疑ったのに、痩せていた20代から言われていた
家族にいびきを指摘されて、最初に考えたのは「痩せなきゃ」でした。首まわりの脂肪が気道を押しているのだろうと。ところが体重計に乗っても、責める材料が見つかりません。過去をさかのぼっているうちに、思い出したことがありました。20代のころ、今よりずっと軽かった時期に、旅行先で友人から「うるさくて眠れなかった」と言われていたのです。当時は笑い話で流して、翌日には忘れていました。体重を落とす方向では説明がつかない。そう分かってから鏡で口の中を見て、奥歯のテストにたどり着きました。指2本は入りません。そして日中、パソコンに向かっているときに奥歯を噛みしめている自分に気づきました。
骨格は変えられない。ゆるめられるのは緊張のほう
ここは正直に書きます。生まれ持った顎の大きさや位置は、自宅のトレーニングで変わりません。骨を動かす話は矯正や外科の領域で、私は医者ではないので治療の話はしません。
顎の緊張は、外側から喉を押している
顎タイプの人が抱えているものは、骨格だけではありません。顎はたくさんの筋肉で支えられていて、その筋肉が縮んだままだと、顎は本来の位置よりも上がった、閉じた場所で固まります。
問題はその先です。顎が上がって後ろに引けると、顎の下から喉にかけての空間が縮みます。舌の付け根はそこに収まっているので、押し出された舌は後ろへ逃げ場を探すことになります。骨で狭いところに、筋肉の緊張が上乗せされている状態です。仰向けで眠れば、そこへ重力も加わります。
上乗せの部分は、自分で下ろせます。噛みしめの癖、日中の食いしばり、緊張したときに奥歯を合わせる反応。ほどくのに時間はかかりますが、方向としては動かせる場所です。
食いしばり・歯ぎしりとの関係
顎の緊張には、昼のものと夜のものがあります。日中、集中しているときに上下の歯を触れさせ続けてしまう癖と、眠っている間の歯ぎしりや食いしばりは、別のものとして扱われています。やっかいなのは後者で、本人に自覚がありません。家族の指摘か、歯のすり減りか、朝の顎の重さでしか分からないからです。
夜に顎の筋肉が休めないと、朝の時点ですでにこわばっています。その状態で日中また噛みしめれば、顎はますます閉じた位置で固まる。歯ぎしりといびきは別の現象ですが、顎まわりが硬いという一点では地続きです。ほどきにいく先も同じ場所になります。朝の顎の重さから前の晩を読み取る側の話は、起きた直後の20秒で顎を確かめる手順のほうに分けて置いてあります。
日中の食いしばりに気づくための合図
ほどくには、まず気づくことです。私は場面を4つ決めて、そこだけ確認するようにしました。スマートフォンを見ているとき、パソコンで集中しているとき、運転中に赤信号で止まったとき、誰かを待っているとき。
その瞬間に上下の歯が触れていたら、息を細く吐きながら奥歯を離し、舌先を上の前歯の裏の少し後ろに軽く当てます。それで一度リセットされます。モニターの縁と洗面所の鏡に付箋を貼っておくと、思い出す回数が増えます。1日に10回気づければ十分で、完璧にやろうとすると続きません。
自宅ケアの外側にある選択肢
ここから先は、私の担当ではない場所です。名前だけ並べておきます。
- 歯科のスリープスプリント:下顎をわずかに前に保つ装置を歯科で作る
- 歯列矯正や顎の外科手術:骨格そのものを扱う領域。いびきだけを理由に選ぶものではないとされています
- 検査で無呼吸と分かった場合のCPAP:睡眠中の気道に空気を送り込む医療機器
どれが自分に合うかの判断は、歯科と医科に預けてください。
今日からできる顎まわりの3つ
顎まわりをゆるめる手順のうち、道具も場所もほとんどいらない3つを公開します。どれも私が毎日やっているものです。
1|顎を落とす
噛みしめで固まった顎を、蝶番のように動かしてほどく動きです。テスト1で指が入らなかった人は、ここから始めるのがいいと思います。
- 上下の奥歯をごく軽く合わせます。
- そこから、奥歯と奥歯をできるだけ離すように口を開けます。前に伸ばしたり、無理に大きく開いたりしないこと。
- ゆっくり閉じて、また離す。これを10回から20回くり返します。
意識するのは奥歯だけです。開け方の見た目はどうでもよく、奥歯を合わせて離す、それだけが大事です。やりすぎは逆効果なので、1日2回にとどめてください。終わったあと、顎まわりが軽くなっているのを感じられると思います。
2|咀嚼(そしゃく)
顎タイプの人にとって大事なのは、噛む力を強くすることではなく、離す動きを体に思い出させることです。何も口に入れずにやります。
- 唇を閉じたまま、ガムを噛んでいるつもりで顎を動かします。
- 左右の奥歯が「離れて、軽く触れる」をくり返す感覚をたどります。力は込めません。
- 1分ほどで終わりにします。1日1回か2回で十分です。
何も噛んでいないので負担は軽いのですが、最初は少しだるくなります。数十秒から始めて、慣れたら伸ばしてください。歯みがきのあとに固定すると忘れません。
3|声に出して読む
3つめは、口を閉じたまま顎と舌と唇を同時に動かす手順です。これだけ小道具を1つ使います。
- ペットボトルのキャップを用意し、前歯で軽く挟みます。噛みつぶす必要はありません。
- 背筋を伸ばして座り、本や新聞を声に出して読みます。内容は何でも構いません。
- 2分から5分。最初は1分か2分から始めて、慣れてきたら5分まで伸ばします。
注意が3つあります。キャップは終始軽くくわえるだけで、強く噛まないこと。発音しにくいシャ行は飛ばして構いません。そして、飲み込む危険があるので、小さな子どもの前ではやらないでください。読み終えたあとに顎の下がじんわり温かくなる感じがあれば、狙いどおりです。
やる前に、ひとつだけ
顎関節に痛み・カクつき・開口制限がある人は、先に歯科で相談してください。やっていて痛みが出た場合も、その場で中止です。ゆるめるための運動で顎を痛めては元も子もありません。
この3つは顎タイプの入口です。どれをいくつ組み合わせるか、1日3分の人と30分使える人で配分をどう変えるかは、記事に収まらないので教材のほうに置いてあります。また、顎が狭い人ほど仰向けで舌が落ちやすいので、寝る姿勢も一緒に見直すと変化が早いです。姿勢の話はいびきと寝方にまとめました。
マウスピースが顎タイプに向きやすい理由

いびき対策のマウスピースは、下顎をわずかに前に保った状態で上下を固定する作りになっています。顎が前に出れば、その土台に乗っている舌の付け根も前に来る。顎タイプの人が困っているのは舌が後ろに落ちることなので、理屈としては噛み合っています。
一方で、向かない人がいることも同じくらいはっきり書かれています。顎関節に痛みや制限がある人、支えになる歯が少ない人、鼻づまりが強くて鼻呼吸ができない人などです。どれを選ぶべきかは私の領分ではないので、判断は歯科の先生に預けてください。
市販品と歯科製の分かれ目は「試す段階か、続ける段階か」
判断軸を1つだけ挙げるなら、これだと思っています。市販の型取り式は、口の中に異物を入れて眠れるのか、朝の口の乾きに耐えられるのかを、安く自分の体で試すための道具です。ここで無理だと分かる人はけっこういます。逆に、毎晩これで眠りたいと思えた人は、噛み合わせを見ながら調整してもらえる歯科の段階に進む価値があります。費用や保険の条件を含めた細かい違いはいびきマウスピースの効果に整理してあります。
私自身は、外側から支える道具と、内側の緊張をゆるめる手順は、どちらか一方ではなく併走させるものだと思っています。道具は今夜の音を止め、手順は外した夜のために積まれていくからです。
これは自力の話ではない、という線引き

ここまで自宅でできることを書いてきましたが、線を引いておきます。眠っている間に呼吸が止まっていると指摘されたことがある人、日中に強い眠気があって仕事や運転に差し障る人は、セルフケアより先に医療機関で診てもらってください。睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、これは体操でどうこうする話ではありません。内科、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来のいずれかが窓口になります。その外来に行くと初診で何をされるのか、受付から会計までの流れはいびき外来の初診の流れをたどった記事にあるので、予約ボタンの前で手が止まってしまう方はのぞいてみてください。顎が小さい人はもともとリスクを指摘されやすい側なので、なおさら早めがいいと思います。同じ線引きでも、家族に生まれたばかりの赤ちゃんがいる場合はもっと手前で止めたほうがよく、赤ちゃんの呼吸音で迷ったときの見方は、大人向けのケアを当てはめず小児科へ持っていく前提で別に書きました。もう一つ、看取りの時期に高齢の家族ののどでゴロゴロ鳴る音を聞いて、いびきと同じものなのか迷っている場合も、確かめる相手はこの記事ではなく主治医か訪問看護になるので、音そのものの違いは死前喘鳴といびきが別の音とされる理由のほうに整理してあります。
そのうえで、検査を受けて経過を見ている人も、まだそこまでではない人も、顎まわりの緊張をゆるめておいて損はありません。
顎の大きさは選べませんでした。でも、日中の噛みしめをほどくかどうかと、今夜どの向きで寝るかは、まだこちらの手に残っています。私はそこから始めて、音が変わっていくのを記録しています。
