いびきで眠りが浅い。寝ても疲れが取れない理由

うるさいのは自分なのに、いちばん寝足りないのも自分。その感覚は、気のせいではないと思います。
気道が狭いまま呼吸を続けている夜、体は眠りの底まで下りきれないとされています。朝と昼に出るサインの読み方と、自宅で扱える範囲の線引きを整理します。
いびきの夜、体は何度も起きかけている
いびきは、となりで眠る人の問題だと思っていました。私が出している音であって、私自身が困る話ではない、と。
その理解は半分でした。音が鳴っているとき、私の喉のどこかは狭くなっています。呼吸の通り道が部分的に塞がり、そこを空気が無理に通るので、まわりのやわらかい組織が震える。あの音の正体は、その振動だと説明されています。

問題は、狭いまま呼吸を続けている体の側です。通り道が細くなると、同じだけの空気を入れるのに余分な力が要ります。体はそれを察知して、いったん眠りを浅くします。姿勢を変えたり、ゆるんでいた喉の筋肉に力を入れ直したりして、気道を開き直すためです。これが覚醒反応と呼ばれるもので、私が調べた範囲では、本人の記憶に残らないほど短い時間で終わるとされています。
ここが、いびきのやっかいなところだと思います。目が覚めた記憶が残らないので、本人の側には何も残らない。翌朝の実感は「朝まで一度も起きなかった」になります。それでも体のほうは、夜のあいだ何度も浅いところへ引き上げられている。ごくたまに、その引き上げが記憶に残るところまで届いて自分の音で目が覚めることがありますが、その一回をどう扱うかは音で起きた夜と息で起きた夜の見分け方に分けて書きました。
眠りには浅い段階と深い段階があって、深いところまで下りていくには、邪魔されない時間の長さが要るとされています。下りかけては引き戻され、また下りかけては引き戻される。これをくり返すと、横になっていた時間は足りているのに、深い段階の取り分だけが削られていきます。
寝ても疲れが取れない、という言い方を私は長く使ってきました。いま思えば、正確には「寝ていたのに休めていなかった」でした。眠りの長さの問題ではなく、中身の問題だったわけです。ここを取り違えていたので、私の対策はずっと「早く寝る」の方向にずれていました。
深いところまで下りられない夜が続くと、私の場合は翌日の集中の切れ方が変わりました。夕方まで持たない、というより、集中が始まらない。机に向かっているのに同じ行を何度も読んでいる。当時は仕事の内容のせいだと思っていましたが、振り返ると、予定のない休日にも同じことが起きていました。
朝に出るサインと、昼に出るサイン
自分のいびきは、自分では聞けません。録音すれば聞けますが、毎晩は続きません。だから私は、いびきそのものより、いびきの外側に出るサインを手がかりにしました。出る場所は、朝と昼に分かれます。
朝に出る3つ
- 口の中がからからに乾いている
- 起きた直後に、頭が重い、あるいは痛い
- 喉の奥がイガイガする、声が出にくい
口の渇きは、夜のあいだ口が開いていたサインです。鼻がつまっていると人は口で呼吸します。口が開くと顎が下がり、舌の奥が喉のほうへ落ちやすくなる。喉はさらに狭くなります。渇きそのものは結果ですが、原因の入口を教えてくれる結果でもあります。
喉のイガイガも同じ流れの先にあります。本来なら鼻を通って湿り気と温度がついてから届く空気が、口から乾いたまま喉に当たり続ける。乾燥した季節やエアコンをつけた夜に強く出るのは、そのせいだと私は理解しています。
起床時の頭の重さは、私にはいちばん分かりにくいサインでした。起きて一時間もするとうすれてしまうので、昼には忘れているからです。夜のあいだの呼吸の乱れと関係することがあるとされていますが、頭痛の原因はほかにもたくさんあるので、これ単独で決めつけないほうがよさそうです。

昼に出る1つ
そして日中の眠気。これがいちばん分かりやすく、いちばん軽く見られています。
私の場合、出る場所は決まっていました。午後の会議と、単調な道の運転中です。どちらも、体を動かさずに同じ姿勢で座り続けている時間でした。逆に言えば、動いているあいだは出てきません。だから忙しい日ほど自分では気づけず、その日の予定のせいにできてしまいます。
眠いだけでなく、意思とは関係なくこくりと落ちてしまう場面があるなら、落ちた場所を危険度で仕分ける居眠りマップで、危ない場面に入っていないかを先に確かめてみてください。

この4つは、どれか1つだけなら別の説明がつきます。乾燥した部屋、飲みすぎた翌日、単に寝る時間が遅かった日。私が意味があると思ったのは、朝の1つと昼の1つがそろって、それが何日も続いたときでした。単発ではなく、そろって続くかどうか。見るのはそこだと思っています。
「年のせい」で片づけていたのは、私です
年齢のせいという説明は、とても強い。まず反論されません。同年代に言えば、わかる、と返ってきます。しかも自分に落ち度がないことになるうえ、何もしなくていいという結論まで一緒についてきます。ここまでそろっている説明を、人はなかなか手放せません。
私のケース:朝の頭痛と昼の眠気を、ずっと「年のせい」で処理していた
朝、起き上がる前の数分だけ、後頭部が重い日がありました。顔を洗うころには薄れているので、昼には忘れています。午後は午後で、会議中に相手の話が途切れて聞こえることがありました。あとで自分のノートを見ると、行の途中で文字が消えている。
私はこれを、四十を過ぎたからだ、で処理していました。同年代に言えば全員が同意してくれるし、それ以上の説明を誰も求めてきません。私自身も、そこで考えるのをやめられました。
崩れたのは、朝の口の渇きに気づいたときです。年齢のせいなら、なぜ毎朝、口の中だけがからからなのか。年をとったことは、私の口が乾く理由までは説明してくれませんでした。
そこから、起きた直後にメモを取り始めました。渇き、頭の重さ、喉のイガイガ。数年前に一度、自力でいびきを軽くしたことがあるのに、そのときの記録を私は一枚も残していません。同じことをくり返すのはやめようと思って、今回は書くほうから始めました。
眠りが浅いと、いびきの条件そのものが悪くなる
年のせいに見えやすい理由が、もうひとつあると思っています。この状態は、放っておくとゆっくり悪くなる向きに回るからです。
眠りの浅い日が続くと、昼の活動量が落ちます。動かないぶん、夕方に手軽なものへ手が伸びる。そうして体重が増えると、喉のまわりにも脂肪がつき、気道はさらに狭くなるとされています。狭くなれば夜の覚醒反応は増え、翌日はもっと動けない。輪が一周するのに何か月もかかるので、渦中にいると変化として見えません。気づいたときには「去年より疲れやすくなった」という感想だけが残り、それが年齢の話に吸収されていきます。
この輪には、日ごとに条件を悪くする要素も混ざります。お酒を飲んだ夜、鼻がつまっている時期、極端に疲れた日。そういう夜だけ音が跳ねるのは、加齢とは別の理由です。
年のせいかどうかを自分で検算するとき、私が使った問いが3つあります。
- 週末に長く寝れば、月曜の朝は軽くなるか
- 年齢だけで、毎朝の口の渇きまで説明がつくか
- 同じ年代でいびきをかかない人にも、同じ眠気が出ているか
私の場合は、週末にどれだけ長く寝ても、月曜の朝の重さが変わりませんでした。時間を足しても戻らないのなら、足りていないのは時間ではありません。この一往復だけで、年のせいという説明はかなり弱くなります。
\ 原因の見取り図から /
朝と昼のサインが読めても、狭くなっているのが鼻なのか、喉なのか、舌なのかまでは分かりません。5つのタイプ別に何をどう組むかは気道力メソッドにまとめています。
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ここから先は、セルフケアの外側です
ここまで、朝と昼のサインを手がかりにする話を書いてきました。ただ、そのサインの中には、自宅の工夫で様子を見てはいけないものが混ざっています。この記事でいちばん書きたかったのは、ここです。私は医者ではないので、治療の話はしません。書けるのは、どこから先が自分の手の外なのか、という線までです。
次のようなことがあるなら、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性を考える必要があるとされています。
- 睡眠中に呼吸が止まっていると家族に指摘されたことがある
- いびきが止まったあと、大きく息を吸い直す音がすると言われた
- 夜中に、息苦しさで目が覚めることがある
- しっかり寝たはずなのに、日中の眠気が強い(会議中や運転中にうとうとする)
- 起床時の頭痛や、起きても疲れが取れない感じが続いている
- 高血圧、糖尿病、不整脈などを指摘されている
とくに、呼吸が止まっていると指摘されたことと、日中の眠気が強いことの2つがそろっている場合。このときは、自宅ケアより先に受診してください。喉の体操を続けながら様子を見る順番ではありません。この2つは胃カメラなどで鎮静を受けるときの問診でも聞かれる項目なので、そちらの予定がある人は検査の前に伝えておきたい3つにも目を通しておいてください。

ここでひとつ、この記事の主題の側から補っておきます。日中の眠気は、強さを自分で測りにくい感覚です。その状態に慣れてしまうと、それが自分の普通になるからです。私は、次の3つのどれかに当てはまるかどうかで見ることにしました。
- 運転中に、はっとして車線を戻したことがあるか
- 人と話している最中に、意識が飛んだことがあるか
- 眠気のせいで、予定を変えたり休んだりしたことがあるか
座って本を読んでいて眠くなるのと、運転中に落ちるのとでは、意味が違います。後者に心当たりがあるなら、それはもう自宅で測っている場合ではないと私は考えています。
相談先は、鼻や喉の通りが気になるなら耳鼻咽喉科、呼吸が止まると言われたなら呼吸器内科や睡眠外来、というのがおおまかな分かれ方です。科ごとの役割分担と、自宅で一晩つけて調べる簡易検査の流れはいびきは何科?にまとめました。
不安を大きくしたくてこの節を置いているのではありません。当てはまらない人にとっては、ここを通過できたという確認になります。私の場合も、録音に呼吸が止まる無音は入っていませんでした。だから自宅でできる範囲を選べています。線を先に引いておくと、そのあとの記録が落ち着いて続けられます。
朝と昼を、記録できる形にしておく
受診の対象ではなかった。あるいは診てもらったうえで、生活のほうを整えましょうと言われた。その場合に私がまずやったのは、体操ではなく記録でした。
理由は単純です。朝の口の渇きも頭の重さも、一時間もすれば消えてしまう。夜の対策を何か始めたとしても、効いたかどうかを判定する材料が手元に残りません。眠りの浅さは、記憶に残らないところで起きているぶん、記録の側で捕まえるしかないと思っています。
朝と昼のサインを残す、3つの手順
- 起きて3分以内に書く。顔を洗う前、スマホを見る前です。口の渇き、頭の重さ、喉のイガイガの3つを、その場で拾います
- 3段階だけで書く。なし、少し、はっきり。細かく点数をつけようとすると続きません。3項目を3段階なので、10秒あれば終わります
- 昼の眠気は、時刻ではなく場面で書く。15時に眠かった、ではなく、会議中に落ちた、運転中にはっとした。場面で書いておくと、あとから読み返したときに強さのほうが分かります
注意は1つだけです。書けなかった日を空欄のまま置いて、そこで止めないこと。私は3日書けなかった週があって、そのときは空欄に斜線を引いて先へ進めました。空白は、あとから埋められません。

それと、何かを始める前に数晩ぶんを取っておくこと。始めてからでは、比べる相手がいません。あとから遡って記録することはできない、というだけの話ですが、これを飛ばすと「効いた気がする」以上のことは言えなくなります。私にとっての142点も、その開始前の1つでした。
音のほうを数字で追うなら計測アプリを使うことになりますが、スコアの見方と、測り方をそろえる決まりはいびきラボの使い方に分けて書きました。日ごとの上下ではなく7日平均で見る、という判定の仕方もそちらに揃えています。私の記録そのものは実測30日ログに置いてあります。
そのうえで、喉や舌を動かす具体的な手順はいびき改善トレーニングに3つまとめました。この記事で扱ったのは、その手前にある「いま自分の夜がどうなっているか」の読み方のほうです。順番としては、線を引く、記録する、それから動かす、になります。
