「いびき様呼吸」とは?正常な寝息・いびきとの違いをやさしく整理

「いびき様呼吸」という聞き慣れない言葉に出会って、これは何なのかと不安になった。私も、意味の分からない言葉の前で立ち止まった側です。
先に一言だけ書きます。「様」は「〜のような」という意味で、いびきに似た音のする呼吸を、外から見た人が言葉にしたものです。この記事では、その語の意味と、寝息やいびきとの呼び分けだけを整理します。
この記事の目次
「いびき様呼吸」という言葉を三つに割ってみる
まず、言葉を三つに割ってみます。「いびき様呼吸」は、「いびき」と「様」と「呼吸」でできています。そして意味の全部を握っているのは、真ん中の「様」です。ここでの「様」は、様子や模様の様ではなく、「〜のような」と読む側の様です。だからこの言葉は、いびきのように聞こえる呼吸を、その場にいた人が言葉にしたもの、と読み解けます。
ここで自分の立場をはっきりさせておきます。私は四十五歳、いびきをかく側の人間であって、医療の資格は持っていません。この記事で書けるのは語の意味を並べ直すところまでで、あなたやご家族の呼吸がどの状態にあたるのか、病気かどうかという判定には踏み込めません。診断のつもりで読まないでください。

もう一つ、最初に置いておきたいことがあります。これは病名ではありません。いびきという語が病気の名前ではなく音の名前であるのと同じで、「いびき様呼吸」も状態や病気につけられた名前ではなく、呼吸のようすを外から描写した言い方です。この言葉を見た、あるいは言われた、という一点だけで、何かが確定するわけではない。まずはそこで、いったん息をついてもらえたらと思います。
そしてもう一段だけ踏み込むと、この言葉はいびきと主語が違います。いびきは、かいている本人の身体に起きている現象の名前です。対していびき様呼吸は、その音を聞いた第三者が、耳に届いたとおりを書き取った記述の名前です。前者は本人の側にある出来事、後者は観察した人の側にある言葉。同じ音を指しているのに、立っている場所が違うわけです。この一段が抜けたまま調べると、いびきの解説といびき様呼吸の解説が食い違って見えて、余計に混乱します。
私が調べた範囲では、記録や申し送りの文章には「◯◯様」という書き方がいくつかあり、どれも「◯◯のように見える」という意味で使われているとされています。断定を避けて、目や耳に入ったとおりを残しておくための書き方です。「いびき様」も、その仲間だと考えると腑に落ちます。
正常な寝息・いびき・いびき様呼吸を並べて分ける
ここがこの記事の本題です。似た三つの言葉に、それぞれの居場所を決めていきます。見るポイントは二つ。どれくらい音がするかと、誰が、どんな場面で使う言葉かです。
正常な寝息
眠っているあいだの、静かで規則的な呼吸です。スースーという程度で、耳を澄ませないと分からないくらいの音量にとどまります。空気の通り道がしっかり開いていて、流れが乱れていない状態だと考えてください。となりで寝ている人が気に留めない範囲なら、たいていはこちら側です。

いびき
眠りに入って空気の通り道が細くなり、そこを空気が押し通るときに、まわりのやわらかい部分が震える。その震えが音になったものがいびきです。グーグー、ガーガーと連続して鳴り、寝息よりはっきり大きくなります。押さえておきたいのは、細いなりに空気は行き来しているという点です。鳴ってはいるが、呼吸そのものは続いている。それがいびきです。なぜ通り道が細くなるのかという仕組みは、この記事の担当ではないので触れません。音のパターンごとの聞き分けはいびきの音の記事にあります。
いびき様呼吸
いびきに似た荒い音を伴う呼吸を、その場で見ていた人が客観的に書き取った言い方です。前の二つと決定的に違うのは、使われる範囲の広さにあります。寝息といびきは、どちらも眠っているあいだの話でした。ところが「いびき様呼吸」は、眠っている普通の状態を指すこともあれば、眠り以外の場面、たとえば意識がはっきりしない人の荒い呼吸を書き留めるときにも使われる、とされています。
三つ並べると、こうなります。ほとんど音を立てないのが寝息。眠りのなかで鳴っているのがいびき。そして、いびきに似た荒さを、眠りの中とはかぎらない場面まで含めて外から描いた言い方がいびき様呼吸。音のようすが近いので混ざりやすいのですが、前の二つは眠りの中で起きている現象、最後の一つは音を描写するための言葉だと分けておくと、頭のなかが散らかりません。
もう一つ、確からしさの度合いも違います。寝息やいびきは、翌朝に録音を聞き返せば本人でも確かめ直せます。いびき様呼吸のほうは、聞いた人がその瞬間に受け取った印象を、そのまま残した言葉です。だから同じ夜の同じ音でも、聞き手によっては「いびき」と書かれ、別の聞き手には「いびき様呼吸」と書かれることが起こります。言葉のゆれは、呼吸のゆれではなく、書き手の慎重さのゆれだと考えてください。
なぜ「いびき」と言い切らず「いびき様」と書くのか
では、なぜわざわざ遠回りな言い方をするのか。ここには、その語を選んだ人の慎重さが表れています。
「いびき」と書いてしまうと、それは眠っている人がかいている音だ、と決めてかかったことになります。眠っている、という判断まで一緒に書き込むことになるわけです。けれど音を外から聞いただけでは、ふだんどおりのいびきなのか、それとも別の理由で似た音が出ているのかまでは分かりません。そこで、決めつけを一段外して「いびきのように聞こえる呼吸だった」と、耳に届いたところで止めておく。その止め方が「様」の一字に入っている、と私は受け取っています。

この慎重さは、書いた人の知識が足りないから出てくるものではありません。むしろ逆で、見聞きしたことと、そこから導いた解釈とを混ぜないための作法です。だから「いびき様呼吸」と書かれた記録は、書き手が丁寧だったことの証でもあります。読む側からすると仰々しく見えて身構えてしまうのですが、あの一字は警報ではなく、保留の印だと思ってください。
言い換えると、この語には「これがいびきなのかどうか、私には決められません」という含みがあります。決められないから、後で読む人が判断できるように、音のようすだけを残しておく。裏返せば、語そのものには重さの情報が入っていないということでもあります。重いのか軽いのかは語ではなく、次の節で見るとおり、どんな場面で出てきたかによって決まります。
同じ言葉でも、出てきた場面で重さが変わる
私が調べた範囲で、この言い方に出会う場面は大きく三つに分かれていました。同じ言葉でも、この三つで受け取り方はまるで変わります。
1. 眠っている家族について書かれていた場合
介護の記録や、家族が付けたメモに出てくるパターンです。眠っている普通の状態を指しているなら、音のようすとしてはふだんのいびきと地続きだと考えていいと思います。この場合にやることは、意味を調べ尽くすことではなく、次の節に書く言葉の貼り分けと、当てはまるサインがあるかの確認です。
2. 意識がはっきりしない人について言われた場合
ここは扱いが変わります。いま目の前で、呼びかけても反応のない人が荒い呼吸をしているなら、言葉の意味を調べている場面ではありません。反応があるか、ふだんどおり息をしているかを確かめて、様子がおかしければためらわず救急へ連絡する、という順番になります。その見きわめ方はこの記事の担当ではなく、いびきと突然死・脳梗塞が怖いときの記事に分けてまとめてあります。急ぎの場面なら、この記事を閉じてそちらへ行ってください。
3. 自分の呼吸が気になって検索した場合
録音を聞いた、あるいは家族に指摘されて、この言葉にたどり着いた場合です。この記事はここに向けて書いています。落ち着いて言葉の居場所を決めて、必要なら医療機関に相談する、という順に進められます。その先で、荒い音の奥に呼吸の止まる病気があるのではと気になった方へ。いびきは鳴っている音につけた名前、無呼吸は止まっていることにつけた名前で、そもそも指しているものが別です。その違いと重症度の考え方は睡眠時無呼吸症候群(SAS)とはの記事に置いてあるので、そちらに任せます。
だから、この言葉を見て怖くなったときにいちばん効くのは、意味をさらに深く掘ることではなく、どの場面で出てきた言葉なのかを先に確かめることです。眠っている家族の記録に書かれた一行なのか、意識のない場面で口にされた一言なのか、自分で検索して行き当たった見出しなのか。ここが決まれば、次にやることも自動的に決まります。
三つの言葉を、自分の録音に貼り分けてみる
ここからは三つ目の場面、つまり落ち着いて自分の呼吸を確かめたい人に向けた話です。言葉で読んで納得しても、いざ自分の録音を前にすると、どれがどれだか混ざります。私がそうでした。だから私は、音を減らそうとする前に、言葉を紙の上に貼り分ける作業から始めました。
使うのは、買い切りの教材(気道力メソッド)に付いてくる記録シートを1枚と、ペンだけです。ほかに買い足すものはありません。
寝息・いびき・いびき様、三つの見出しで録音に印をつける(最初に1回・5分)
- 記録シートの裏を1枚使い、横に三つの欄を作って、左から「寝息」「いびき」「いびき様」と見出しを書きます。
- 朝、前の晩の録音を早送りで流します。ほとんど音のない、スースーとした時間帯を見つけたら「寝息」の欄に、その時刻だけ書きます。
- ゴーゴー、ガーガーと続けて鳴っている時間帯を見つけたら「いびき」の欄に時刻を書きます。
- どちらとも言い切れない、荒く引きずるような音が混じる箇所があれば「いびき様」の欄に時刻だけ書きます。ここで同じ場所を何度も聞き返さないでください。時刻を拾うだけにします。
- 紙の隅に「これは言葉をそろえるための紙であって、診断ではない」と書き添えて終わりです。
回数の目安:最初に1回。あとは月に一度、同じ紙に日付を足して見返すだけ。
注意が二つあります。ひとつ、これは自分を病気だと決めるための紙でも、逆に大丈夫だと安心し切るための紙でもありません。言葉をそろえるだけの作業です。ふたつ、音が途切れて無音になり、そのあと大きく吸い直す、という区切りが入っているかどうかは、この三つの欄とはまったく別の観点です。それは音のようすの話ではなく、呼吸が続いているかどうかの話なので、この紙では追いません。
その別の観点にあたる、相談を先に置いたほうがいい目安を書いておきます。夜中に息が止まっているよ、と家族から言われたことがある。あるいは時間としては十分に寝ているのに、運転中や打ち合わせ中にうとうとするほど昼間の眠気が強い。このどちらかに覚えがあるなら、紙に印をつけて様子を見る順番ではなく、医療機関に相談するほうが先だとされています。昼の眠気と眠りの質のつながりはいびきで眠りが浅いサインの記事に譲ります。私は医療者ではないので、当てはまるかどうかを判定する立場にはありません。ただ、この二つについては順序が決まっている、とだけお伝えします。
\ まず、言葉をそろえるところから /
録音に印をつける記録シートと、貼り分けた三つの言葉をその後の自宅ケアにつなぐ手順は気道力メソッドにまとめています。今日のところは、三つの欄を作るところまでで十分です。
教材の内容を見る※18歳未満は登録できません
録音を再生して、寝息といびきの区別がつかなかった夜
私のケース:録音を再生して、これは普通の寝息なのかいびきなのか、言葉で区別できなかった
私は四十五歳、いびきの当事者です。医療者ではないので、書けるのは自分がどこでつまずいたか、という話だけです。
妻に「今日は下で寝るね」と言われ、別室の話を持ち出されかけた夜がありました。その翌夜、生まれて初めて枕元に計測アプリを置いて眠りました。翌朝の画面に出ていたのが142点です。数字にも驚いたのですが、それ以上に手が止まったのは、残っていた録音を再生したときでした。
低く長く引きずる音が、延々と鳴っていました。ところが私は、それを聞きながら、これを「いびき」と呼ぶべきなのか、少し大きめの「寝息」と呼ぶべきなのか、自分の言葉で仕分けられませんでした。うるさい気もするし、ただ寝ているだけとも言える。ちょうどその頃に「いびき様呼吸」という言い方もどこかで目にしていたので、頭のなかで三つの言葉がぐるぐる回って、結局どれとも決められないまま録音を閉じました。数字は出ているのに、その数字が何の音を測ったものなのかを、私は言い表せなかったのです。
あとで分かったのは、私に足りていなかったのは対策ではなく言葉のほうだった、ということでした。寝息といびきといびき様呼吸を仕分けられないまま調べ続けても、どの説明も自分に当てはまるように読めて、不安だけが積み上がっていきます。だから私は、音を減らす前に、三つの言葉を紙の上で分ける作業からやり直しました。
念のため繰り返します。私は医療者ではありません。ここに書いたのは診断ではなく、素人が自分の録音を聞いた範囲の話です。もし録音のなかに、音が途切れて無音になり、そのあと大きく吸い直す区切りが入っていたら、私は言葉を数える側ではなく、受診を先に置く側へ回っていました。

この夜に学んだのは、点数や音の大きさを追いかける前に、言葉をそろえたほうが早いということでした。寝息なのか、いびきなのか、いびき様と呼ばれる荒さなのか。この呼び分けが自分のなかでついていないと、調べるほど怖い見出しに引っ張られます。逆に、三つの居場所さえ決まっていれば、次に何を確かめればいいのかが見えてきます。
もう一つ気づいたのは、言葉が足りないと道具ばかりが増える、ということでした。私は何を減らしたいのかを言えないまま、鼻に貼るテープや市販のマウスピースを順番に買っては、引き出しにしまってきました。あのとき先に紙を一枚書いていれば、せめて「自分が減らしたいのはどの音か」くらいは言えたはずです。
分けた言葉を、どこで使うか
最後に、分けた言葉をどこで使うかの話をして終わります。ここから先はこの記事の担当ではないので、案内にとどめます。
ひとつめは、家族とのあいだです。うるさい、そんなにうるさくない、という押し問答は、たいてい二人の言葉が揃っていないところから始まります。「三時台は静かな寝息、四時台はいびき、五時前に荒い音が混じっていた」と紙に書いて渡せるようになると、感想のぶつけ合いが、同じ紙をのぞき込む共同作業に変わります。うちでは、これがいちばん効きました。
ふたつめは、医療機関の窓口です。予約の電話でも受付でも、話が長くなるのは材料が揃っていないときです。「家族の記録にいびき様呼吸と書かれていて、その意味と、自分の呼吸がどれにあたるのかを知りたい」。この一文があれば、こちらの用件は十分に伝わります。言葉を持っていくというのは、そういうことです。
みっつめは、その先です。荒い音の奥に呼吸の止まる病気が隠れていないか、という心配は、語の整理では解けません。そこは前の節で挙げた記事に譲ります。ただ、寝息といびきといびき様呼吸の三つが分かれてさえいれば、そちらの話も入りやすくなるはずです。
言葉というのは、正体が分からないうちは実際より重く響きます。私も142という数字と並べて「いびき様呼吸」という言い方を見たときは、ずいぶん身構えました。ほどいてみれば、寝息は静かな呼吸、いびきは眠りのなかで鳴る音、いびき様呼吸はその音に似た荒さを外から書き取った言葉、というだけのことでした。三つの居場所が手元にあれば、次に誰かへ説明するとき、こちらの状態を短い言葉で渡せます。資格は持っていませんが、言葉を用意しておくことなら、素人にもできます。
